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CARBON NEUTRAL

カーボンニュートラルという目標に向けた歩み方を考える~緩和と適応~

確実に現れてきている地球温暖化による気象への影響

2023年度もあとわずかになってきました。今年度は降雨量が少なかったり、1年を通して気温が高く12月でも20℃を超えたりと地球温暖化の気象への影響を体感しました。少しずつ、しかしながら確実に地球温暖化による気象への影響が現れてきているようです。

世界の平均気温は長期的に上昇しており、IPCC第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことに疑う余地がない」と報告されています。

また、2023年7月には国連のアントニオ・グレテス事務総長が、7月の世界の月間平均気温が過去最高を更新する見通しとなったことを受け、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と記者会見を開いて警告しています。

そのため、各国は足並みをそろえてカーボンニュートラル(※)に向けた取り組みを進めていく必要がありますが、2023年11月からドバイにて行われたCOP28でも化石燃料からの脱却の加速に言及するも、石炭火力発電について削減時期などの踏み込んだ言及は行われませんでした。
(※) カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体として排出量をゼロにすることを指します。

緩和と適応について


出典:気候変動適応情報プラットフォーム

今まで私たちは気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らすという「緩和」を主に生活に取り入れるよう意識してきました。

ECCCA WEB MAGAZINEでも環境に優しいリサイクルの方法、食料となる動物とのかかわり方、家庭で消費するエネルギーとの向き合い方などを通して温室効果ガス排出量を削減する方法などを取り上げてきたように、今後はより一層私たちが豊かに暮らしていくための地球を守るためにも、身の回りの資源や生きものとのかかわり方が重要になっていくと思います。

しかし、今後は緩和だけではなく将来予測される気候変動の影響による被害を回避・軽減させるといった「適応」にも同時に取り組む必要があります。

緩和とは?

出典:気候変動適応情報プラットフォーム

緩和とは、温室効果ガス排出量を削減するという考え方を指します。

緩和策として、省エネへの取り組み、再生可能エネルギーやCCSの普及、植物による二酸化炭素吸収源強化などが必要と考えられます。

そのため、私たち一人ひとりが、ごみの分別を行う、ガソリンや電気の消費量を減らす、植林活動に参加して森林の保全・保護からできる温室効果ガスの吸収量を増やすといった暮らし方について、日々考えて実践することが重要です。

適応とは?

出典:気候変動適応情報プラットフォーム

適応とは、すでに起こりつつある気候変動影響への防止・軽減のための備えと新しい気候条件の利用を行うことを指します。

現在約40億トン/年の温室効果ガスが大気中に溜まり続けています。カーボンニュートラルが達成されるまで私たちはその影響を受けることになるでしょう。

実際、今年の夏も猛暑日が続きました。メディア等で熱中症予防を徹底するよう、今年は特に啓発していた印象があります。

また、このまま気温上昇が続けば、生態系に更なる影響が及び、やがて今まで日本では流行していなかった感染症なども起こる可能性がありますし、これまで作ることが出来ていた農作物が作れなくなる可能性もあります。日本は食糧自給率が低く、輸入に頼っている食品が少なくありません。世界的に作れない農作物が増えてしまうと日本人の食糧問題にも影響が出てくる可能性が大きいでしょう。

このように私たちは変化していく地球の状態に適応していくことが求められつつあります。

では、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。

例えば、食糧問題に対しては高温でも育つように農作物の品種改良・新種の開発などが挙げられますし、防災面では海岸線の防波堤の建設を通して洪水・津波対策を行うことや災害時の避難計画の策定など、もしもの時に備えて家族や周囲の人たちと協力して対応していくことがこれまで以上に重要になっていくでしょう。

まとめ

今回は緩和と適応について紹介しました。何か一つでも実践できるものは見つかりそうですか? 熱中症対策、災害対策など、備えることを主に紹介しました。これらは今後の被害を最小限に抑える効果があることに加え、暮らしを良くする効果もあります。

また、備えることはビジネスチャンスにもつながります。例えば愛媛県では夏の暑さに強く、収量が多くて栽培しやすい「ひめの凛」という品種のお米がすでに開発され普及しています。他にも、日本企業が高い技術と経験力を活かして海外の環境課題に取り組んでいる事例もたくさんあります。

私たち一人ひとりにもできることはあります。

私は緩和策としてHEVエコカー利用を、適応策として夏にマイボトルに水やスポーツドリンクを入れてこまめな水分補給を意識することで熱中症に備えています。また、地震などの災害時に備えて家族との連絡手段や避難経路をお互いに確認することを継続しています。このような行動は、暮らしの質の向上につながっています。

マイボトルを持ち運ぶことにより外でペットボトルを購入する量が減りました。また、災害対策の話し合いをきっかけに、異常気象やその原因となっている地球温暖化について家族と話す機会が増えました。機会が増えたことで地球温暖化を意識し、できる対策を考える、というサイクルができるようになりました。

緩和と適応の両輪で取り組む方法を考え、実践する人が増えることで、私たち一人ひとりの暮らし、そして地域のコミュニティにも良い影響が広がっていくと思います。

是非、今日から始めてみましょう。

(学生推進員 八木 新葉)

[参考文献]
気候変動の緩和策と適応策の違いは?具体事例を交えてわかりやすく解説! – SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』
緩和・適応とは | IPCC 第5次評価報告書 特設ページ (jccca.org)
気候変動と適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT) (nies.go.jp)
リサイクル・省資源記事一覧 | ecojin(エコジン):環境省 (env.go.jp)
学生推進員のサステナコラム | ECCCA WEB MAGAZINE
カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省 (env.go.jp)
【地球温暖化は嘘なのか】なぜ寒波?冬に寒くなる理由とは – 地球のミライ – NHK みんなでプラス
気象庁|地球温暖化と十年規模変動 (jma.go.jp)
「G7」で議論された、エネルギーと環境のこれからとは?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
西日本で60日間降水量が平年の3割未満 鹿野川ダムで貯水率ゼロ 取水制限も(気象予報士 日直主任 2023年11月21日) – 日本気象協会 tenki.jp
愛媛の新しいお米「ひめの凜」について
2023年7月は「史上最も暑い月」 国連事務総長「地球沸騰の時代が来た」
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠) 政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)

 

 

 

 

 

愛媛県学生地球温暖化防止活動推進員

愛媛県地球温暖化防止活動推進センターより委嘱を受けて活動しています。

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