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COLUMN&INTERVIEW

ハカセと学ぶ気候変動と自分たちのつながり 第九回:プラスチックと私たち(後編)

過去2回にわたってプラスチックについて取り上げてきましたが、今回いよいよ温暖化との関係について書いてみます。
プラスチックと私たち(前編)(中編

みなさんは、週あたりどのくらいのプラごみを出しますか?

毎回出すプラゴミの量は、家族構成や生活習慣、自治体の回収状況にもよると思いますが、45-60Lのゴミ袋で1〜数個くらいにはなるのではないでしょうか。プラスチックだけが分別されている袋だと重さとしては大したことないような気がしますが、どのくらいの重さになるのでしょうか。

そして、日本全体ではどのくらいの量がつくられ、廃棄されているのでしょうか?

令和3年の環境白書によると、「2019年におけるプラスチックの生産量は1,050万トン、国内消費量は 939 万トン、廃プラスチックの総排出量は850万トンと推定されます」とのこと。日本の人口を 1 億 2424 万人(令和5年12月1日現在推定値)とすると、人口1人あたり 68 kg /年の排出で、世界第二位(日本財団)とのこと。ということは、68 kg を 52 週でわると、一週間一人あたり 1.3 kg ということになります。

これって多い?少ない?

では、リサイクルされているのはどのくらい?

では、捨てられたプラスチックのうち、どのくらいがリサイクルされているのでしょうか。環境省のこちらの資料では、2018年に廃棄されたプラスチックは 891 万トンで、そのうち「リサイクル」に回された量が 84 % の750 万トンとなっています。

(環境省資料。ここまできちんと数字が取れているだけでもなかなかすごいですよね。)

リサイクルの種類

84 % というとなかなか優秀!と思いがちですが、内情をみるとちょっと感想が変わります。図の右端、「処理処分段階」の「廃棄物計」の部分を見てください。「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」と書かれているのがわかるでしょうか。リサイクルには実は種類があります。

1つ目のマテリアルリサイクルは、プラスチックを熱で溶かして形を変え、材料や製品として再び出荷されていくものです。マテリアルリサイクルされた廃プラスチックの量は 208 万トン(23.3 %)となっていて、意外に少ないですね。そのうち 66 %は再生材料(再生材料は、ペレット、フレーク、フラフ、ブロック、インゴット)として、 34 %は再生製品(再生材料以外のフィルム・シート類、棒杭、パイプ等)としてリサイクルされているようです。

2つ目のケミカルリサイクルは、再び油の状態に戻したり、ガス化したりなど、化学的に処理をすることで再度原料化し、繊維などとして再度製品となっていくもの。かわいい蜂のマークに BRING という文字の書かれたボックスを見たことがあるでしょうか。JEPLANという会社が衣類を回収してケミカルリサイクルし、再び衣類を作るという取り組みを大規模にやっています。これはすごい。かっこいい。しかしケミカルリサイクルは国内では 4 % しかありません。

3つ目のサーマルリサイクルは、平たく言うと燃やすこと。私たちが日常で出した「燃えるゴミ」の中にも生ゴミなど燃えにくいものが含まれます。これにもともと油でできたプラスチックを入れることで燃焼を助ける役目を果たしてくれます。廃棄されたプラスチックのうち約半分の 56 % がこの処理をされていますが、海外ではこの方法をリサイクルとはみなさない場合も多いようです。サーマルを除くとリサイクルされているのはわずか 27 %となり、まだまだ努力が必要な数字です。燃やすことで有害なガスやもちろん二酸化炭素を排出するので「リサイクル」には貢献していても、プラスチックを燃やすのは化石燃料を燃やすことなので、温暖化には加担するということになります。

「リサイクル」の過程で起こっていること

プラスチックのリサイクルは、どこでどのように行われているのでしょうか?

実は、リサイクルは国内で行われているだけではありません。日本からプラスチックくず が輸出され、海外でも処理が行われている現状があります。実は 2017 年までは中国がその 50-60 % を占めていたのですが、中国国内のプラゴミ処理が逼迫してきたため、12月に受け入れ規制を始めました。行き先を失った国内のプラごみは、タイ、マレーシア、台湾等への輸出が増えたのですが、それらの国・地域でも輸入規制が始まると、これらの国への輸出も減少しています。2019 年の国別の輸出量は、マレーシア、台湾、ベトナム、タイ、韓国の順で多くなっているとのこと(環境省資料)。

↑この資料には、こんなページがありました。輸出先の国でどんなことが起こっているのか?ということについてです。)

日本国内ほどきちんとした処理はされそうにない、というのは想像に難くないですね。

以前書いたスマホの記事でも e-waste の処理による環境汚染を取り上げましたが、適切な処理がされないことによる環境汚染がこちらでも起こっているようです。

影響は他にも

こちらはインドネシアの事例で、ジャカルタからのゴミを集めている場所をレポートしたもの。海外からのゴミもここに集積されているかはわかりませんが、ウェイストピッカーと呼ばれる人々がゴミの中から使える物を探し出し、集めて売ることを生業にしています。そのおかげでリサイクル率が上がることに貢献してはいるようですが、ここで働くことは悪臭や危険だけでなく毒物やウイルスに晒される危険性と、児童労働も普通に行われているようです。

少し古いニュースですが、インドネシアのバリ島では観光への被害もでています。野積みにされたゴミが台風や豪雨などによって流出し、河川や海に溢れ、観光ビーチがとても泳げない状況に。こうして海にでたプラスチックゴミはやがて海流に乗って漂流し、やがて日本に戻ってくるものもあるでしょうし、生き物たちが犠牲になってゆきます。

海にでたプラスチックは劣化して破砕され、やがてマイクロプラスチックに。2050 年には魚よりもプラスチックが多くなるとも言われています。このマイクロプラスチックの生体への影響はまだまだ研究の途上ですが、少なくとも健康増進や環境がよくなることには繋がらなそうです。

ここまで書いたことを図にまとめるとこんな感じになります。


(プラごみからの環境・社会問題のつながりマップ。)

プラごみはまずは分別する必要がありますが、分別したもの全てが物としてリサイクルされている訳ではない。サーマルリサイクルとして燃やされている現状もある。燃やせば温室効果ガスが出る。リサイクルに伴う環境的・社会的負荷も、まだまだある現状です。便利なプラスチックと、私たちはどう付き合っていけばいいのでしょうか。

こうすればいい、という決定的な答えがあるわけではもちろんありませんが、利用者の自分たちが少しでも使用量を減らしたり、分別をきちんとしたり、生産や処理の過程にまで意識をむけ、知り、話題にしていくこは今すぐにできることかもしれません。それが普通になれば、少しずつ自分や社会をシフトさせていくことができるのではないでしょうか。

【これまでのコラム】
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この記事を書いた人

大岩根 尚(おおいわね・ひさし)

1982年宮崎市生まれ、環境活動家。株式会社 musuhi 取締役。 2010年に東京大学で環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、53次南極観測隊として南極内陸の調査隊に参加。帰国後は研究者を辞め、鹿児島県三島村役場のジオパーク専門職員として働く。2015年に認定獲得した後、役場職員を辞めて同村の硫黄島に移住、起業。硫黄島での自然体験、研究、SDGs 関連のサポートなど幅広く活動中。特に、気候変動対策としては書籍 Drawdown や Regeneration の翻訳協力、鹿児島県大崎町のサーキュラーヴィレッジラボ所長、個人レベルのアクションを創出する講座の開催など、さまざまなレベルでの活動を展開している。

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