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COLUMN&INTERVIEW

ハカセと学ぶ気候変動と自分たちのつながり 第十回:まとめ

ここまで10回の連載で、

地球の過去や未来をどうやって知るのか?(第一回)
今、どんなことが起きているのか?(第二回)
これから地球はどうなるのか?(第三回)
食と温暖化とのつながり(第四回)
服と温暖化、そのほかの問題とのつながり(第五回)
スマホと温暖化、そのほかの問題とのつながり(第六回)
プラスチックによる環境汚染(第七回)
プラスチックと私たちの暮らし(第八回)
プラスチックと温暖化のつながり(第九回)

という流れで連載をしてきました。

温暖化は深刻で、このまま放っておくと高温、豪雨、旱魃、洪水、高潮、農作物の不作、疫病などなど、あらゆる側面で暮らしにくい世界になっていくことが予想されています。そしてその温暖化は、「世界征服を企む悪の組織」が企てていることではなく、衣食住、スマホ、プラスチックなど、私たちの日常を通じて引き起こしていることだということをここまで見てきました。

この連載の間にも、2023年の世界平均気温は史上最高を大幅に上回る結果(CNN記事)となり、温暖化が着実に進んでいることへの危機感が高まってきています。

地球温暖化を逆転させる100の方法

そんな温暖化の現状に対して、一体自分たちは何から始めたらいいんだろう?何が効くんだろう?と思っていらっしゃる方も多いと思います。そのヒントの一部がこれまでの連載で紹介してきた、衣食住や消費財の利用に対して意識を向けることだったのですが、より具体的に教えてくれているのが今回ご紹介するこちらの書籍 「DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法」 です。

DRAWDOWN では、何をやったらどれくらい温室効果ガスを減らせるのか、そしてそれに費用がいくらかかり、いくら節約できるのか、を網羅的に 80 もの解決策を示してくれています。こちらのデータは全て、ピアレビュー(同業の研究者に査読してもらうこと)を経て全ての指摘に応えた論文のものを選んでいます。つまり信頼性が高いということです。

僕がこの本の英語版に出会ったのが 2020 年の 3 月なのですが、これは…!!と嬉しくなりました。

その理由としてちょっと振り返りますが、僕は鹿児島に引っ越してくるまでの 10 年以上にわたり、地質学を通じて地球の歴史や仕組みについて学び、南極観測隊としても現場に身を置き研究をしてきました。ここまでの連載でもお伝えしたように、この数十万年の地球の「当たり前」を逸脱した現状には危機感を覚えてきました。

しかし、残念ながらそのことは一般の方々には充分と言えるほど知られてはいないし、気候危機を引き起こしたこれまで通りの生活や社会の活動は大勢として続いています。それは「何をしたら気候変動を止められるのか、それがどのくらい効くのか」が、定量的に示されていなかったから、ということが原因の一つにあったようにも思います。

そういうわけで、この本は大きな希望です。この本のランキングを頼りに、自分たちが何に取り組めばいいのか、優先順位をもって判断できるからです。政府や国連レベルのアクションもあれば、個人や家庭でできるものもある。これは希望だ!!と嬉しくなったわけです。

2020 年時点では日本語版が出版されていませんでしたが、いち早くこれを多くの方に広めたい!!と思いました。そこで、自分なりのまとめを作り、個人のfacebookなどで投稿していきました。せっかく頑張って作ったのにお蔵入りになってしまって勿体無いので、一部だけを貼って解説を書いておきます。もっと詳しく読みたくなった方はぜひ書籍を買って読んでね!ということで、3つだけこちらに記しておきます。

第一位 冷媒の管理

(第一位 冷媒の管理)

え?冷媒って?という感じですよね。とても意外なことに、温暖化を止めるために真っ先に減らすべき物質は二酸化炭素ではなかったのです!

冷蔵庫やクーラーにはもともとフロンガスが使われていました。「フロンガス」って聞いたことありますよね?オゾン層を破壊する、という話のアレです。そう、オゾン層を破壊してしまうので、使用が規制されるようになり、現在は代替フロンもとよばれる「ハイドロフルオロカーボン(HFC)」というものが使われるようになりました(現在はオゾンホールは回復し始めているとのこと)。

ですが、この代替フロンが、実はなかなかの曲者だったのです。
こちらをご覧ください。

(環境省 算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧 より)

こちらは、いろんな気体の「地球温暖化係数」を示した表です。二酸化炭素を基準として、その物質がどのくらい地球を温暖化させる能力があるのかという数値です。僕もここまで細かく詳しくは知らなかったのですが、種類はかなりいろいろあるんですね。

ここで注目していただきたいのは右端の列です。
二酸化炭素 1
メタン 28
とか、書いてありますよね。これはメタンは二酸化炭素の28倍、地球を温暖化させる能力があるということです。牛のゲップの中のメタンが温暖化に効いているという話がありましたが、そんなわけなのです…。

という前提で、上の表の中部~下の方を見てみてください。モノによっては二酸化炭素の12,400 倍の温室効果のあるものも確認できます。このように、代替フロンはすごく強い温室効果ガスなので、クーラーやエアコンなど廃棄するときは確実に回収しましょうね、ということだし、空き家につけっぱなしになってボロボロになっている室外機などから漏れ出さないように、早めに回収しましょうね!!ということです。

第二位 陸上風力発電

(第二位 陸上の風力発電)

第二位が陸上の風力発電です。「洋上」の風力発電は第 22 位にランクインしています。風力発電は、既に石炭火力よりは安くて早く作れてクリーンになってきているようです。もちろん風が吹く場所を選ぶ必要があるので、どこにでも設置できるというわけではありませんし、ずっと安定的に発電を続けられるわけでもありません。騒音や景観、生態系への影響などがあるので、そこはよくよく配慮する必要があります。

山の稜線にどどーんと風車が並んでるのを見るのは好きじゃないのですが、PCもスマホもタブレットも使いながら、さらにAIを駆使して…という電気使いまくりながらの生活でありながら「原子力も火力もイヤ。ソーラーパネルも森を切って景観が美しくないし、風力は生物に影響が出るからダメ。」というのは虫が良すぎる感じもしますね。

今のところ環境負荷ゼロで暮らせない以上は、温室効果ガスを出して世界中で被害を受けるよりは、局所的な景観や環境の悪影響を我慢するしかないのでしょうか。。自分の快適さと、世界や生態系のこれからの幸せと、、どう考えていくのがいいのでしょうか。

アメリカの西部やイギリスの沖の洋上風力発電は壮観で、こちらの記事には世界最大の洋上風力発電所のことが書かれています。原発を全廃して日本近海にもこういうものを作るのがいいのでしょうか。風が吹かないときはどうしたらいいのでしょうか。

第三位 フードロスの削減

(第三位 フードロスの削減)

第三位は「フードロスの削減」です。牛と温暖化の回で書いたように、また最近の国連の報告書にもあるように、食料の生産が最大の排出原因で、30 % を占めています。そしてこちらの農水省の資料にあるように、日本は最大のフードマイレージを持つ輸入大国です。

(農水省資料 日本のフードマイレージは世界最高。涙)

こうして世界中に環境負荷をかけながら食料をかき集めていながら、『日本人1人当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと近い量になる』(農水省)とのこと。なかなかとんでもないことをしています。

世界で見ると、作られた食品の 3分の1 もが捨てられていて、一方で 8 億人もの人が飢餓に苦しんでいるとのこと。結局 3分の1 も捨てるなら、エネルギーも労働力も農地も使わなくていいじゃん!という話ですよね。

フードロスは、僕たちが「形のいいものを買う」から食べられるのに形の悪いものが畑に残されるし「今日食べるのになるべく新しいものを買う」から、少し古くなっただけのものが(食べられるのに)捨てられてしまうことになります。結構些細なことですが、フードロスをしないように気を付ける、ということは毎日3食を通じて実行できることです。気をつけたいですよね。

このように、書籍ドローダウンでは何を優先すべきか、それにいくらかかるか、それによってどのくらい節約できるか、ということを書いてくれています。興味が出た方はぜひ手にとって読んで見ていただきたいですし、このような本を参考に、私たちも身近なところから、自分にできるところから、取り組んでいけたらいいですね。

連載のまとめ

私たちの日常が地球や人や生き物に、大きな負荷をかけています。そうしないと生きていけない生活になってしまっている、というのが私たちの暮らしのあり方です。そうやって気候変動が起こり、また同様に、自然を破壊しすぎた結果として危険なウイルスを森から引き出してしまいました。そんな私たちの暮らしや文明のあり方はもう見直さなくては立ち行かない時期にきていることは明白です。

上で紹介した DRAWDOWN のプロジェクトを立ち上げたポールホーケンは「気候変動は自分たちのために起こっていると考えてはどうだろう」と言っています。私たちの暮らしは様々な環境的・社会的負荷をかけてきましたが、この気候変動をきっかけに、そうでない世界を作りなおしていけたらいいと、僕も本当にそう思います。

自分たちが少し気をつけたところで、プラや二酸化炭素を大量に排出している人々もいるから意味がない…と思いたくなることもあると思います。それもわかりますが、自分はこんな未来になってほしいから、自分は努力するし、一緒にがんばろう、と言えるとかっこいいですね。どんな小さなことでも、やったほうが将来の被害は小さくなりますし、将来の自分から見ても誇らしく思えるはずです。皆さんも一緒に、美しい世界を作りなおすために今日から一歩、何かに取り組んでみませんか?

おわり

この記事を書いた人

大岩根 尚(おおいわね・ひさし)

1982年宮崎市生まれ、環境活動家。株式会社 musuhi 取締役。 2010年に東京大学で環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、53次南極観測隊として南極内陸の調査隊に参加。帰国後は研究者を辞め、鹿児島県三島村役場のジオパーク専門職員として働く。2015年に認定獲得した後、役場職員を辞めて同村の硫黄島に移住、起業。硫黄島での自然体験、研究、SDGs 関連のサポートなど幅広く活動中。特に、気候変動対策としては書籍 Drawdown や Regeneration の翻訳協力、鹿児島県大崎町のサーキュラーヴィレッジラボ所長、個人レベルのアクションを創出する講座の開催など、さまざまなレベルでの活動を展開している。

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