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COLUMN&INTERVIEW

ハカセと学ぶ気候変動と自分たちのつながり 第七回:プラスチックと私たち(前編)

『今週、クレジットカード食べた?』

何を言ってるんだ?というような問いですが、実はほとんどの人が YES と答えられる量のプラスチックを、私たちは日常的に食べています。

1 週間に 5 グラム。

ニューカッスル大学の研究で、私たちは毎週、クレジットカード 1 枚分、約 5 グラムのプラスチックを知らず知らずに体内に摂取しているとのこと(ニュース記事はこちら)。

ナショナルジオグラフィックのこちらの記事では「人は年間3万9000~5万2000個のマイクロプラスチックを食物とともに摂取するという。呼吸で吸い込む量も考慮すれば、その数は1年で7万4000個を超えるという」とのこと。

1日200粒以上のプラスチック片を、僕たちは食べてしまっているようです。初めて知った方は、一体どこからそんなに?と思われたことでしょう。答えは「思いつくところ全て」と言っても過言ではありません。

いろいろと調べてみると、魚や野菜、ペットボトル入りの飲料、紅茶のティーバッグ、瓶入りのビール、塩、水道、そして空気中と、ありとあらゆるところから、マイクロプラスチックやナノプラスチックが検出されています。つまり、それらを通して私たちの口から入ってきていますし、なんと既に血液中からもプラスチックが検出されています

UnsplashNaja Bertolt Jensenが撮影

すこし詳しく書くとこんな感じです。

「海に流れ込むマイクロプラの28%が車のタイヤから」-タイヤがすり減るということは、その部分がどこかへ行ってしまっているわけです。粉塵として拡散したり、雨に流されて川へ、やがて海へと到達します。

「スクラブ入りの洗顔、合成繊維の服を洗濯した時に発生するポリエステルやアクリル等の化学繊維、食器洗いに使われるメラミン樹脂製スポンジなどから排出される
「化学繊維の服の洗濯1回により、数百万のマイクロプラスチックが海へ流れ出している」

– などなど、リンク先を見てみてください。

この連載を読んでくださっている方の多くは、既に海洋のプラスチック汚染が深刻なものだということはご存じでしょう。『2050 年には海にいる魚の量をプラスチックの量が上回る』と言われるほど。涙

そうして、環境中に排出されるプラスチックがやがて海へとたどり着き、小魚やエビなどが食べ、食物連鎖を通じて食卓に戻ってきている場合も少なからずあるようです。

食物連鎖だけはなく、「プラスチック素材のバッグに入ったティーバッグ一つをお湯に浸すと、約116億個のマイクロプラスチックと、31億個のナノプラスチックがカップに放出される」など、海水から作った塩、ペットボトル、水道やビール、大気中の粉塵などにも含まれており、、ということで、エベレストの山頂付近まで、文字通り世界中にプラスチックの粉塵は拡散していて、私たちは日常的にマイクロプラスチックを食べているようです。

洗顔のスクラブのように、初めからマイクロプラスチックとして環境中に放出されるものもありますが、写真のようなプラゴミが粉砕されて最終的にマイクロプラスチックになっていくものも多いようです。ぼくが住んでいる硫黄島でも、たくさんのプラゴミが漂着しています。涙

硫黄島の海岸。ときどきみんなできれいにするけど、、ときどき自分でも拾いに行きますが、、無限に流れついてきます。

僕が初めてプラゴミに興味を持ったのは、この映像でした。苦しんでいる海鳥の映像です。閲覧注意。

これは海鳥ですが、鯨やウミガメのお腹にプラスチックが詰まって餓死するとか、絡まって動けなくなって死んでしまう、などの事例は本当にたくさんあるようです。

これまでは、このような物理的な要因での被害が多く確認され取り上げられてきていましたが、プラスチックを体内に取り入れることによる化学的無毒性についても、調べられてきています。

プラスチックは疎水性なので、海に浮いている間に疎水性の成分を吸着し環境中から濃集させます。それらの成分の中で、毒性を持つものが体内に入った時に、鳥や魚の体内に蓄積することも明らかにされてきています。

これが人体に入ってきたら、、まだ詳しい影響は未解明とのことですが、すくなくとも体に良くて健康増進!とはならなさそうです。

さて、こうして今では環境問題の筆頭に挙げられてしまっているプラスチックですが、実はもともとは、環境保全のために利用が増えてきた、という側面もあるようです。

従来、装飾品として使われていたウミガメの甲羅や象牙をプラスチックで代用することで殺さずに済んでいた、というものが一つ。もう一つは、廃棄物になるしかなかった製油所からの副産物をプラスチックペレットとして利用し、お金に換えられるということがありました。また、ガラスのボトルがペットボトルに置き換わることで軽量化され、輸送時のCO2が削減されたり、容器包装に高性能プラを使うことで食品の寿命が伸び、ロス削減につながったり。

今では悪者扱いですが、確かに私たちの生活を豊かに便利にもしてくれています。だからこそこれだけ多くの場面で使われるようになっているわけです。

プラそのものが悪い訳ではない。便利だし、役立つし、なくてはならない存在でもある。そのプラスチックと、僕たちは今後どう付き合って行ったらいいんでしょう?ということについて、次回は僕の体験も含めつつ少し詳しく書いてみたいと思います。

【これまでのコラム】
第一回はこちら
第二回はこちら
第三回はこちら
第四回はこちら
第五回はこちら
第六回はこちら

※メイン画像:Unsplashより(Naja Bertolt Jensen撮影)

この記事を書いた人

大岩根 尚(おおいわね・ひさし)

1982年宮崎市生まれ、環境活動家。株式会社 musuhi 取締役。 2010年に東京大学で環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、53次南極観測隊として南極内陸の調査隊に参加。帰国後は研究者を辞め、鹿児島県三島村役場のジオパーク専門職員として働く。2015年に認定獲得した後、役場職員を辞めて同村の硫黄島に移住、起業。硫黄島での自然体験、研究、SDGs 関連のサポートなど幅広く活動中。特に、気候変動対策としては書籍 Drawdown や Regeneration の翻訳協力、鹿児島県大崎町のサーキュラーヴィレッジラボ所長、個人レベルのアクションを創出する講座の開催など、さまざまなレベルでの活動を展開している。

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