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COLUMN&INTERVIEW

SDGs連載【第9回】若手社員中心のSDGs推進組織を結成!付加価値向上で持続可能な社会を目指す/松山市 佐川印刷株式会社

持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標「SDGs(エスディージーズ)」。
今回は、このSDGsに関する取り組みをご紹介する連載の【第9回】。働き方改革の先進企業として知られる、松山市の佐川印刷で、SDGsを推進する組織として結成された「STEP2030」のメンバーの皆さんにお話しをお聞きしてきました!
組織を結成したきっかけやその取り組み、会社として推進する「地域貢献」や「雇用の維持」など、持続可能な社会を目指すための考え方やその方法について詳しくご紹介します。

プロフィール紹介

佐川印刷株式会社 STEP2030メンバー
経営管理部 次長 加納飛鳥さん
営業部 佐々木佑恵さん(入社3年目)
営業部 中村貴博さん(入社2年目)
営業部 加藤万弥さん(入社1年目)

佐川印刷は、1947年創業。印刷だけでなく、動画制作、広告事業、Web事業、看板やウェアプリント事業などにも業務の幅を広げている。

愛媛県における働き方改革先進企業としても知られ、経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選(2017年)」、中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社(2017年)」、愛媛県法人会連合会「女性が働きやすい企業風土づくりコンテスト(2019年)グランプリ」などの受賞がある。愛媛県SDGs推進企業、松山市SDGs推進協議会に登録。

STEP2030メンバーでのミーティングの様子

若手社員中心のSDGs推進組織を結成!社員全員に同じレベルの知識を

–貴社がSDGsに取り組むことになったきっかけは、何だったのでしょうか?

加納飛鳥さん(以下、加納):当社では、1947年の創業当時から「印刷を通じて地域社会を元気にする」を経営理念として掲げてきました。地域を元気にすると、佐川印刷も元気になります。これまでも、周辺環境に配慮した製品工場を作ったり、愛媛県の産地直送の柑橘を届けるECショップを展開したりするなどの活動は行ってきました。
今後、自社の事業を活用して、地域にどのような貢献ができるのかを考えていたとき、当社が目指しているゴールと「SDGs」のゴールがリンクしていることに気が付きました。現在、経営方針にもSDGsが盛り込まれ「社員一人ひとりがSDGsを正しく理解して自分ごとにしていく」ことを重視して取り組んでいるところです。

社内の階段に掲示するSDGsのゴールを表すパネルを制作

–新たに、社内でSDGsを推進する組織を発足されたとか。

加納:はい。新入社員から2〜3年目の若手社員を中心としたSDGs社内推進プロジェクト「STEP2030」を結成しました。私が統括していますが、他のメンバーは新入社員が3名と、入社2年目、3年目がそれぞれ1名の計6名。今年の2月にキックオフを行ったばかりです。
SDGsの達成目標である2030年は今から9年後。彼ら彼女らの世代が、社会の中心になると思います。だから、「SDGsを自分ごとと捉えて、情報発信していく核になってもらいたい」と考え、任命することになりました。

STEP2030のミッションは、社員全員が同じレベルでSDGsの知識を持てるようにすること。業務上SDGsについて知っている人、知らない人がいるとか、知識レベルに差がある今の状態を打破したいですね。
最終的には、お客様から「SDGsに関する発信をしたいけど、どんな方法がある?」など、SDGsに関するご相談を受けたときに、全員が同じように答えられる状態が理想です。

初年度の今年は、まずは「楽しく分かりやすく社内のSDGs理解を深め、達成に向けて行動していくこと」を目標に活動しています。

–具体的な活動内容を教えてください。

加藤万弥さん:最初に、STEP2030のメンバー自身がSDGsについて学び、自分たちの業務と結びつけて考え、正しく理解することに努めました。

次に、社員への理解を促すため、まずはSDGsがどのくらい知られているのかアンケートを取りました。その結果を元に、SDGsのゴールとリンクさせたクイズを作成し、みんなが集まる場所に掲示しています。月に一度は更新するようにしていますが、その都度社内で話題になるなど、すこしずつ皆さんが興味を持ち始めてくださっていると感じます。

社内に掲示された「SDGsクイズ」

 「SDGsクイズ」の回答はSDGsのゴールを表す階段パネルに掲示される

中村貴博さん:まだまだSDGsが社内で浸透していないことが分かったので「社員自身に考えてもらえる仕掛け」として、クイズ形式にしました。日常生活の中で、SDGsについて少しでも触れる時間を持ってもらえれば嬉しいですね。

地域活性化、雇用の創出…持続可能な社会を目指した多くの取り組み

–次に、会社としてのSDGsに関する取り組みについて教えてください

加納:当社では、さまざまな側面から多くの取り組みを行なっています。

まず「地域活性化事業」の一つとしてフリーマガジン「Eのさかな」があります。これは、愛媛の旬の魚を題材に、地域の水産業や食・暮らし・自然や文化などを全国に向けて情報発信することを目的に発刊しているものです。2016年4月に創刊し、現在22号目(2021年11月時点)。

東京都内の地下鉄や、愛媛県にゆかりのある飲食店のほか、関西圏でも配布されています。これを発刊することで、大きくはSDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に繋がると考えています。

【関連】持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み/佐川印刷株式会社
【関連】Eのさかな/佐川印刷株式会社

もう一つは、「地域貢献」という意味での「デジタルプリンティングファクトリー吉田」の開設です。

デジタルプリンティングファクトリー吉田

実はこの工場、当社の創業の地でもあります。

宇和島市吉田町というと過疎化が激しい地域で「老朽化した工場を今後どうするか」という問題が浮上しました。この工場で働いている方々は、会社としては大ベテランでもあり、地域の中でもまだまだ若手の働き盛り。社長は、そういった社員の雇用を維持することは、地域を守ることにも繋がると考えていました。

ただ、今までと同じことをしていては維持できないとして、2006年に、看板、屋外広告、布に印刷するような特殊印刷、またデジタル印刷をも手がける工場に転換します。当初、既存の社員からは反発もあったようですが、「みんなが働き続けられる工場にしていこう」と伝え続けることで理解してもらい、現在は安定して雇用を維持できています。

実は、印刷のオリンピックとも呼ばれる「FESPAアワード2020」で最高賞2冠を受賞した「2.5Dリアルプリンティング」もこの工場で生まれた技術です!

もともとある印刷技術の価値を上げ、自分たちが普段行なっている業務に対する誇りを生み出すことも、非常に意味のあることだと思っています。

2.5Dリアルプリンティングで印刷された鯛の画像

【関連】2.5Dリアルプリンティング/佐川印刷株式会社

付加価値を向上させ、地域に必要とされる企業へ

–今後のビジョンを教えてください。

加納:SDGsのゴールである2030年。社員みんなが元気で幸せに、佐川印刷で働き続けているイメージがあります。きっと、一人ひとり何かしらの課題は抱えていると思いますが、実はそれって「社会課題」でもあるだろうと思っていて。それを皆で自分ごとと捉え、一緒に解決していくことで、社会課題の解決にもつながると考えています。

佐々木佑恵さん:私たち印刷会社は、当然競合他社がいます。印刷は価格競争に陥りがちですが、そうすると会社が疲弊してしまう。選ばれるためには、付加価値が必要です。商品力もそうですが、SDGsなどの取り組みに励んだりすることによって、それもアピールポイントの一つになります。それらの活動を通して、最終的には「地域に必要とされる企業」になれれば、と思っています。

編集後記

今回の取材で印象に残ったエピソードがあります。
今回掲載しきれませんでしたが、「一人ひとりが活躍できる職場を目指す」取り組みとして、女性の活躍推進にも力を入れられている同社。全国の女性管理職の割合の平均が約8.9%(2021年帝国データバンク調べ)であるなか、同社では28%となっています。それにより、表彰されたりもしていますが、当のご本人たちは「え、それって表彰されるほど珍しいことなの!?」と驚かれたとか。

それほど、女性活躍が当たり前になっている佐川印刷。これからも、SDGsに取り組む愛媛の先進企業として、ロールモデルとしての背中を見せ続けてほしいと思います。

【引用】女性登用に対する企業の意識調査(2021年)/帝国データバンク

この記事を書いた人

三神 早耶(みかみ・さや)

愛媛県松山市在住。大学卒業後、広告代理店の営業や進行管理などを経て、2016年からフリーライターに。ビジネスメディアや、地元経済誌、企業のWebサイト等において、取材や記事の執筆をしています。私生活では2児の母。趣味はキャンプと仕事。

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