女性が自分らしく生きられる社会は地球温暖化の「希望」
皆さまはこのタイトルを見てどのように感じられましたか?
私は正直、地球温暖化と女性というキーワードがすぐには結びつきませんでしたが、今はなるほど!という気持ちです。
今回はECCCA(愛媛県地球温暖化防止活動推進センター)でお借りした1冊の本と、愛媛県内にある会社の取り組みをご紹介します。
その本のタイトルは『DRAWDOWNドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン編著 江守正多監訳 東出顕子訳 山と渓谷社)です。
ここには、地球温暖化を「逆転」させるという「100の解決策」が、研究者や科学者などの国際的なグループによってまとめられ、具体的に示されています。
今後30年の間にこれらの解決策が地球規模で活用されれば、「ドローダウン」つまり大気中の温室効果ガスがピークに達し、その後は減っていくことができるといいます。
しかも、削減できる温室効果ガスの総量や費用対効果に応じて、1位から100位までランキングされていて、上位の項目ほど実行することによる影響が大きいことが分かります。
温暖化対策のカギは太陽光よりも女性
まず驚いたのは、「女児の教育機会」が6位、「家族計画」が7位、しかも太陽光の活用よりも上位だったことでした。
国連の世界人口予測では、2050年に97億人になると言われています(2021年は78億7500人)。
本によると、米国での妊娠の45%が意図しない妊娠だといい、所得の高い国、低い国に関係なく、世界中の女性が避妊や性と生殖に関する医療を受けることができれば、ドローダウンにも波及効果をもたらすとしています。
また、教育年数が長い女性ほど、子どもの数が少なく、生まれてくる子どもの健康状態も良い傾向にあり、女性が平等に教育を受ける機会があれば、自分で家族計画を決める自由と知識を持てる、とあります。教育を受けることで気候変動への対応力も身につきます。
6位、7位を合わせて取り組めば、削減できる炭素排出量は1位を超えるそうで、著者のポール・ホーケン氏は「温暖化対策のカギは太陽光よりも女性である」と話しています。
本には他にも様々な分野からの解決策が提示されていて、自分が興味のある項目を見つけ、そこから自分には何ができるかを考えるきっかけになる本だと思いました。
すべての女性のHappyをサポートする
次にもう少し身近なところで、女性であることを大切にしながら、地球環境に配慮した取り組みもしている「株式会社hanafu」(松山市)をご紹介します。
スタッフは全員が女性。「華布~hanafu~」というブランドでオーガニックコットンを使った布ナプキンや肌着、マスクなどを製造、販売しながら、心、身体、地球にも心地よい暮らし方を発信しています。
代表の大西千鶴さんに、華布で大切にしている3つのことを伺いました。
1,「すべての女性が自分の身体に向き合うことの大切さを伝えたい。」
これまでに県内外でイベントや座談会を重ね、10代から50代までたくさんの女性の声を聴いてきました。女性が自分の身体のことを知り、向き合い、心地よく過ごせるためのサポートを続け、育児や仕事に忙しく、自分のことを後回しにしがちな世代や、若い世代の女性に「自分を大切にすること」を伝えていきたいと思っています。
「生理と布ナプキンとヨガと骨盤底筋のお話会の様子」
また、最近では小学生の男女に向けて「生理について」の教室を開きました。生理になるとお腹が痛くなったり、イライラしたりしてしまうことがある、という具体的な体や心の変化について学び、生理による不調を改善する方法を、ワークを通して楽しみながら伝えました。
自分の大切な人がしんどい思いをしていたら自分だったらどうするかを実際に想像してみることで、まずは「知る」ことで「思いやる」ことができるようになることを体感してもらいました。思いやれる人が増えることでどんどん優しい社会になると信じ、生理についての正しい知識をこれからも伝えていきたいです。
「講座の様子」
2,「女性の多様な働き方を応援したい。」
女性は特に妊娠、出産、育児、介護とライフスタイルが変化しやすいもの。華布では、その時々に自分にとってちょうどいい働き方を選択できるようにしています。
育児の合間に在宅で縫製や検品、パソコンワークをするスタッフもいれば、子供の長期休暇には完全に休んだり、子連れで出社したりするスタッフもいます。地域の預かり事業とも連携し、働きやすい環境を整えています。
「縫製は在宅スタッフが活躍中」
3,「子供たちが安心して暮らせる地球を残したい。」
オーガニックコットンの布ナプキンは、綿を生産する時に農薬などで環境を汚さないだけでなく、洗って繰り返し使うことでゴミを出さないこと、また環境に優しい洗剤で洗うことで海を汚さないことも伝えています。
3年前からはプラスチックごみを削減し、包装をシンプルにする取り組みも始め、注文ごとにまとめて梱包することで、手間はかかっても環境に負荷のかからないように日々工夫しています。
「納品時には自然と風呂敷で」
「個別包装をやめ、ひとまとめにして発送」
地球温暖化を考えることは、希望につながる
今回華布の取り組み伺って、女性が自分らしく生きていくためのサポートをしながら、地球環境へ配慮した企業としての取り組みもしなやかに実現されているのがとても素敵だな、と思いました。最近ではお客様の方から「ごみを出したくないから布ナプキンを使います」とか「できるだけ簡易包装にしてください」と言われるケースも増えているそうです。
本の著者のポール・ホーケン氏は「地球温暖化は私たちのために起こっている。今を悲観的にとらえるのではなく、私たちのすること全てを再考するチャンスである」と話しています。
地球温暖化を考えることは、「生き方を考えること」だと思います。何かを批判したり、「こうすべきだ」と押しつけたりするのではなく、私たち一人一人が「こうだったらいいな」と願う未来を具体的に思い描き、そのためにできることを「選択し」、小さなことからでも「行動する」こと。それは日々の暮らしの中で楽しめることや、誰かを応援すること、または遠くの出来事に関心を持つことなのかもしれません。その繰り返しが確実に地球の未来を変えていけるのだと改めて感じました。
【参考】
『DRAWDOWNドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』(ポール・ホーケン編著 江守正多監訳 東出顕子訳 山と渓谷社)ECCCA(愛媛県地球温暖化防止活動推進センターで貸し出し中)
ドローダウンジャパンコンソーシアム
華布