サステナブルな想いと情報を未来へ~ECCCAの環境ウェブマガジン~

COLUMN&INTERVIEW

家庭菜園から広がる世界

家庭菜園には、世界の他の地域のことを想像する横軸と、昔の人々の生活を受け継ぐ縦軸の両方向を意識する感覚が養われると思っている。それは、興居島(ごごしま)という瀬戸内海の島で生まれ育ち「農家見習い兼パン職人」という肩書きで野菜の管理や畑で土いじりをしてホッとするからこそ気づくことでもある。

代々我が家は専業農家で、主に柑橘と枇杷が換金作物なのだが、趣味の園芸部門でその他の果物や野菜も畑の隅に植えている。いつしか、野菜の管理はほとんど私がするようになった。野菜はそんなに広いスペースでは作っていないが、ちょこちょこ手間をかけてやらなければならず、また、手間をかければそれだけいい物ができて達成感もある。

モノには旬があるが、モノが持つ本来の旬の時期を知れるということや旬には本当にモノの味が変わるということ、そして、何よりそのモノを作るためにどれだけの手間がかかるのかということがこの生活を通してよく分かる。災害で被害を受けた農家の人たちの大変さが、テレビ画面の向こうからでも想像できるようになり、その辛さを身をもって知ることになるのだ。そして、普段は自分目線でしか見れなかった商品の価格の背景も、自ずと分かるようになる。単純に高かったら嫌だ、安かったらうれしい、とだけ感じるのではさもしい気がする。価格が高いということは、どこかで災害や不作になっているということだし、価格が低いということは、豊作で値崩れして廃棄せざるを得ないモノがあるかもしれないし、生産者は経費分の元がとれていないかもしれない。

私の学生時代は、収穫時期に手伝うくらいだった。保育園と小学校のときに、地域の方のご厚意でそれぞれの畑があり、じゃがいもとさつまいもの種植えと収穫行事をしていた。向かいの浜で、収穫したての作物を焼いて食べていたのが、今でも記憶に鮮明に残る楽しいイベントだった。この時はそれで十分だと思う。

一度だけ担任の先生に、「収穫だけを楽しんどったんじゃいかん。それまでが大変なんぞ。」と言われて一時間草引きに行ったが、今の私は、子どもにそこまでさせようとは思わない。大人になって、「あのとき無事に収穫できていたのは、地域の大人の人たちがこまめにお世話をしてくれていたからなんだなぁ。」と気付くことができたので、今は農家見習いとして、家の仕事をこなすだけでいっぱいいっぱいだが、いつか余裕を作り、今度は今の子どもたちのために畑を用意してあげて、次の世代に恩返しをしていきたいと思う。

また、田舎暮らしというと、「物々交換」を思い浮かべる人も多いと思う。肝心なのは、モノと一緒に、それを頂くまでの手間を頂いているということに気付けるかどうかなのだ。そして、頂いた恩は忘れずに返す。逆に、自分が相手にしたことは、してあげっ放しになっても構わないと思って暮らしていく気持ちが大切なのだ。

我が家の野菜畑で使う支柱は竹なのだが、今年初めて、竹を切る段階から私も一緒に作業をした。竹は勢いがあって年々生える場所を広げていくのだが、その広げた範囲分の竹を切って、農作業のルートに邪魔にならないようにする意図も含んでいた。そしてもちろん、竹は使い終わった後に自然に帰る素材である。そういう循環の仕組みも、次世代につなげていきたいと思う。

「いろんな味覚を経験しないと、感情が豊かにならないんだって。」

以前、青年海外協力隊で海外に赴任した友人に聞いたことがある。私は完全な自給自足を目指しているのではない。幸い、戦後の日本生まれで、食材も調味料もレシピの情報も飲食店も、どれもこれもがバラエティ豊かだ。人生一度きりだし、ここは何でも楽しんでみて、いろいろな経験をしたいと思う。

「フードマイレージ」や「地産地消」などは、ひと昔前からよく使われてきた言葉だ。しかし、私は「できる範囲で」ということが長く続けるポイントだと思っている。「おいしいものが、心にも体にも栄養になる」というのが、食いしん坊の私のポリシーだ。「おいしい」と思うものに、貪欲でありたい。おいしいと思う物は輸入食材だって食べるし、すぐ側の畑の野菜は、もぎたてで新鮮で、おいしいからこそ食べるのだ。何も難しく考えなくていい。おいしいものを食べたい!!

ただ、人間、簡単な理由からこんなにも広がる世界があるのだ。ただ、人間、理想や理念だけでは生きてはいけない。フードマイレージや自給自足に近い生活をしている私にも、それは分かっている。誰もが田舎に引っ越せて、畑を持つことなどできないことを。そのため、まずは、ベランダのプランターからでも十分。「おいしい!」や「楽しい!」という感動こそが、長く続ける秘訣なのだ。

393 View

この記事を書いた人

山中 美佳(やまなか・みか)

生まれも育ちも、松山市の興居島(ごごしま)。北九州市立大学外国語学部国際関係学科卒業。 学生時代に、持続可能な生活について学ぶ。その後の生活を経て、理想と現実のすり合わせをしたいと思っている。家業の農家見習い兼パン職人。両親と弟の4人暮らし。