伊予の畑人たち〜メルファーふたがみ&すくすくビーンズ〜
安全で安心できる農産物にどんなイメージをされますか?
子育て中の母親であれば子供が安心して食べられる農産物、アレルギーが気になる方であればアレルギーが出ない農産物、選択の際に国産農産物を選ぶなど、安心安全のイメージは様々です。
そのイメージのひとつに有機栽培農産物が思い浮かびます。もちろん有機栽培に限らず慣行栽培や特別栽培農産物等、栽培方法で安全性が確立されている栽培方法はたくさんあります。
有機農産物は日本農林規格で定められた生産方法によって栽培された農産物が有機栽培を名乗ることが許されます。
(出典:農林水産省HP有機食品の検査認証制度)
今年度は有機栽培に焦点をあてて様々な農家、消費者の方の声をお届けします。
メルファーふたがみ
愛媛県新居浜市の市民の森のお隣に有機栽培ブルーベリーの観光農園があるのをご存じでしょうか?有機栽培のブルーベリーの観光農園は全国的にも珍しくリピーターが後を絶ちません。
メルヘンファームの略から名前をつけた「メルファーふたがみ」。農園で童心に戻って想い出作りをしていただきたいという想いを込めていると園主の二神明宏さんは言います。
有機栽培をはじめるきっかけは“付加価値になるから”といった漠然とした理由でした。
ゼネコンを早期退職し、新規就農で選んだのがブルーベリー栽培。
ブルーベリー栽培を選んだ理由も面積当たり(坪当り)の収入額が他の農産物に比べて優れていた事など、思い入れや無謀な就農ではなく、生活の糧になる所得も計算された上での挑戦だった事がわかりました。
鉢で栽培することで農地自体の土壌改良を大規模に行う必要が無く、無理のない範囲で植樹していくことができます。
もともとブルーベリーは家庭菜園でも農薬や化学肥料を使用しなくても栽培が可能な果樹ですが、収量や正品率を上げるには使用するほうが効率よく栽培することができるため、販売を目的とした農家では慣行栽培が主流です。
そこに目をつけた二神さんは、有機栽培という付加価値を付ける事で、消費者に選ばれるブルーベリー栽培を始めました。
ブルーベリーは鳥獣被害対策として柵で果樹園を囲い、果樹に防除ネットをかけて守ります。(この対策は慣行栽培でも同じです)
有機栽培のブルーベリーは虫の被害が出るため、歯ブラシ、刷毛を使って果樹についた害虫を払い落としています。また害虫は鉢の中の土の表面にも潜んでいるのでそれも丁寧に手で取り払っています。
園内5000㎡、約800本(約8種類)のブルーベリーが栽培されているので地味ですが気の遠くなるような害虫駆除を手作業で行っているのです。
果樹は病気になる事もあります。病気になった果樹は剪定などで回復することもありますが薬品や化学肥料が使えないため、枯れてしまうことも多いといいます。
夫婦二人三脚で切り盛りしている農園ですが、忙しい時期(特に収穫期)はスタッフの方にも手伝っていただいています。ブルーベリーの収穫期は6月から9月初旬で気温の高い時期になるため、スタッフの皆さんに大変助けられているそうです。
メルファーふたがみのブルーベリーは加工品にも適していて、自家製ブルーベリージャム、ブルーベリー甘酒、パウンドケーキなどにも加工して販売しています。
すくすくビーンズ
もうひとかた、今回紹介するのは愛媛県松山市(旧北条市)の洋菓子工房peaceで働かれている笹田弘惠さんが立ち上げられた「すくすくビーンズ」です。
4年前に笹田さんのお姉さんがパーキンソン病になり、家族として姉を支えようと考え、色々と調べていくうちに「ムクナ豆」に出会いました。
パーキンソン病・パーキンソン病症候群は現在においても根本的な治療法はありません。
そこで調べていくとムクナ豆は天然のL-ドーパを含み、そのL-ドーパはパーキンソン病・パーキンソン病症候群に効果があるということがわかりました。
ムクナ豆には天然成分としてL―ドーパが多く含まれており、これを食べる事によってL-ドーパが補給され、パーキンソン病の特効薬のL-ドーパ製剤の代替物として利用することができるということでした。
(出典:郡山貴子、飯島久美子(2020)、他:ムクナ豆をもちいた調理品のL-DOPA1の消長に及ぼす重曹添加の影響:71(6)、pp392 ムクナ豆の効能・効果:ムクナ会(mucuna.jp))
ムクナ豆はもともと江戸時代まではさかんに食材として食べられていた文化があります。根や葉、茎、さやからL-ドーパを放出し、その他感作用によって地中や周囲の微生物や昆虫、雑草を排除するので自然循環型農業の除草剤として利用できます。
収穫量が多く、栽培地を選ばないこと、またその豊かな栄養素から将来の食糧危機の救世主として期待されます。
パーキンソン病への効果に限らず、体を温めたり、動きを良くしたりする効果、疲れやすさを解消する効果などが研究で明らかになってきています。
※主治医の指導の下、ムクナ豆を摂取してください。
すくすくビーンズは、ムクナ豆における技術の開発、発展と、その普及、啓発を趣旨とし、それを通じムクナ豆を活用することで健康の維持、向上を図る事を目的とし、愛媛県内の企業の社長、企業の会長、元大学教授の方たちに理事として協力いただいています。
ムクナ豆は耕作放棄地などの活用でも栽培が可能ですが1株1株の作付面積が広く、耕し栽培する必要があります。一度、栽培にチャレンジしましたがイノシシの被害で収量が激減した経緯があります。
そこで、笹田さんは7月にすくすくビーンズの活動の支援を募る「クラウドファンディング」を立ち上げられました。(クラウドファンディングは超過達成。8月28日に終了しています)
支援を募り活動資金を得る事も大きな目的ではありますが、全国にクラウドファンディングを通じてムクナ豆の事、パーキンソン病の事を知ってもらう事が最も大きな活動の意義だと言います。
ムクナ豆は効果が大きい分、摂取方法や摂取量をコントロールする必要があり、より効果が得られる加工方法をこれからの活動を通じて形にされていく予定です。
クラウドファンディングの全てのリターンに、笹田さんの姉で現主治医(脳神経内科医師)である野本先生の講演動画視聴権を入れさせていただいています。野本先生はパーキンソン病研究の第一人者であり、すくすくビーンズのアドバイザーでもあります。
ムクナ豆を通じて家族の病気を治したい、難病で苦しんでいる方に知ってほしい、一般の方にも健康の為に食べ方の情報を提供したい、といった想いで作付けされているムクナ豆、すくすくビーンズをこれからも応援したいと思います。
※すくすくビーンズでは、個人会員、法人会員、お手伝いいただける方を募集しています。
さいごに
このように、有機栽培といっても作り手、栽培品種によって様々です。
メルファーふたがみの二神さんは、有機栽培は付加価値であり健康な食品を食べたいというニーズに応える事で支持され、差別化ができ、高単価な商品として販売できると言い切ります。
すくすくビーンズの笹田さんは、そもそも農薬や化学肥料を使う必要がないムクナ豆を広げようとしています。
お二方の取材を通じて有機栽培の可能性と広がりを感じる事が出来ました。
皆さんの安心安全な農作物のイメージと重なったのであればぜひ愛媛県の安心安全な農作物を手に取ってみてください。