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COLUMN&INTERVIEW

無農薬栽培は可能か?

無農薬で、なんとか作物を作れないかなぁ

就農する人は、一度はそう考えたことがあると思う。私も一度ならず長い間胸の内にくすぶり続けながら農作業をしていた。私の記憶には、ベトナム戦争で使われた枯葉剤やベトちゃん・ドクちゃんのことがあり、農薬もそれと同じくらい悪い影響があると思っていたのだ。

農薬にもいろいろ種類があるため、父に除草剤を使うのをやめることだけ承諾を得て、かまで草を刈るのを10年くらい続けた。

「除草剤を使わない」ただそれだけで他の仕事に手が回らなくなった。草を刈るのが一巡終わらないうちに次の草や蔓がすぐに伸びてきた。幼虫に木の中を食べられて何十本も木を枯らしてしまったこともあった。それでは木のためにはならない。私は再び除草剤を使うことにした。

「農薬=悪」としか思っていなかったが、作物を健康に保つためには欠かせない農薬もあることを実感した。例えば、我が家で作っている柑橘は、見た目が悪くなる病気もある。ダニや黒点病だらけで皮がカチカチになった実は、皮をむいてみると中身はスカスカで食べられたものではない。また、かいよう病というカサブタのようなものができると、見た目が悪いだけでなくそこからすぐに腐ってしまうのだ。

農薬を使う方法での農業でしか作物は作れないことを実感していた私は、農薬についての現状や環境への影響など素朴な疑問をぶつけるため、愛媛県立農業大学校の板谷俊宏(いたやとしひろ)先生にお話を伺ってきた。

農業大学校では有機栽培の外部講師を招くこともあるが基本的に農薬を使って圃場管理は行われ、また、先生が以前勤められていた農薬メーカーでの農薬の実験は厳しい基準で行われているそうだ。動物実験にも賛否はあるが、例えば、水槽に農薬を入れて魚が一匹でも死んだらその農薬は使えないといったことだ。※圃場(ほじょう):農作物を育てる場所

農業担い手支援塾の様子(上:もも摘果作業 下:野菜実習)

農薬の使用と有機栽培について

私も農薬を減らしてみることには賛成なんですよ。JA等の栽培指針にある最大量の3分の2くらいでいいと思っています。今の除草剤は、確かに土に触れた瞬間から分解されていきます。でも、柔らかい土を作らないといけないのは無農薬や有機栽培と同じなので、除草剤も年間最大3回くらいに抑えて、草刈り機と並行して行った方がいいと思います。

また、ミツバチに影響を与える農薬があり、その農薬は既に禁止されている国もある。日本も今後一斉に禁止されるかもしれません。

しかし、確かに、害虫が出てきて、その後にまたその天敵の虫が出てくるまで待ったりはできませんよ。害虫だけでなく病気も作物に悪いし、人間への影響は?ですしね。

有機栽培(オーガニック)が盛んなアメリカの西海岸あたりは、降雨量が少なく乾燥しているから作物を育てやすいです。しかし、雨が多く山に囲まれた日本では、どうしても害虫や病気が発生しやすい。柑橘や根菜類はまだ育てやすいですが、ぶどうなどの落葉果樹や葉物などの土より上に実がなる野菜は、日本の気候ではどうしても農薬の力を借りずに栽培することは難しいです。無農薬で栽培ができても収量がずっと少ないか、正品率が悪くなると思いますよ。

日本の農業の現状と今後

農家自身が農薬を一番使いたくない。経費の面でも、作業の面でも、そして環境にも何かしら影響があるだろうとは感じているから。しかし「またあのしんどい草刈り作業をせないかんのかあ。農薬を減らしてみるのも怖いなあ。見た目が悪くなったらすぐ2ランクくらいダウンして、収入も半分になっちゃうもんなあ」とも思う。

日本の消費者は見た目がいい物が好きだ。無農薬や減農薬で、なおかつ見た目がいい物が好まれる。無農薬や減農薬でできた物で見た目もいい物がわずかであることは、生産者としてはすぐに想像でき、営農という観点では継続が難しいと思う。ただでさえ農業は苦労の割に収入が少ないことが多く、自分の子どもに農家を継いでくれ、とは言えないのが現状だ。後継者不足の日本の農業に、経営的にも大変な無農薬栽培を理想としてただ求められても生産者にとっては酷な話だ。実際に無農薬栽培を目指して、結局は「畑を荒らした」という評価とともに農業をあきらめるケースをたくさん見てきた。

私はとても食いしん坊で、「おいしいものが栄養になる!!」がモットーだ。バラエティ豊かな食材や味を今後も楽しみたい。自然農法(無農薬な上に草も刈らない不耕起栽培)で作られた小カブがおいしかったのも体験しているし、自然農法で作れる人はとても素晴らしい技術を持っていると思うし、尊敬している。

私はいったん農薬を使うと決心したら農薬を一転全て受け入れようと極端になってしまったが、最低限必要なものに留めて疑いながら使っていくという「中庸」な心を持ちつつ、大好きな興居島で農業を続けていきたい。

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この記事を書いた人

山中 美佳(やまなか・みか)

生まれも育ちも、松山市の興居島(ごごしま)。北九州市立大学外国語学部国際関係学科卒業。 学生時代に、持続可能な生活について学ぶ。その後の生活を経て、理想と現実のすり合わせをしたいと思っている。家業の農家見習い兼パン職人。両親と弟の4人暮らし。