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COLUMN&INTERVIEW

一人ひとりに託された地球の未来~農家が感じる温暖化~

蓮の葉クイズ

突然ですが、皆さまこのクイズの答えわかりますか?

あなたは自宅の庭に池を持っています。そこで、印象派の画家であるモネのように、美しい睡蓮を育てています。

睡蓮は、成長が早く毎日2倍の速さで成長していきます。その睡蓮がどんどん成長していくと、30日であなたの池を完全に覆いつくしてしまいます。睡蓮の葉で池がすべて覆われてしまうと、水の中のほかの生物を窒息させてしまいそうなので、池が睡蓮で半分覆われたら、睡蓮を刈ろうと思っています。

さて、何日目に池が睡蓮で半分覆われてしまうのでしょうか?

答えは、29日目です。池の生物を救うには、残り1日しかないのです。毎日2倍ということは1日前に半分、ということになります。

このお話は、1972年にローマ・クラブによって書かれた『成長の限界』の中で紹介されているフランスの子供向けのなぞなぞです。

私はこのなぞなぞを、皇后雅子さまが外交官時代に、環境問題・温暖化による危機を訴えるスピーチに取り入れられたという記事で知りました。天皇御成婚から30年近くたち、世界はまさに睡蓮で池が覆われてしまう前日のような異常気象に見舞われています。

50年に1度や100年に1度といわれる大雨が、毎年世界のどこかで降るようになってきました。

日本では、急にものすごく暑くなったり、その暑い時期がだんだん長くなったりという感覚があります。実際、あいものを着る時期が短くなり、特に秋祭りの時期になると、昔は着物を着て見に行っていたのに近年ではまだ暑くて半袖でいいくらいだという変化に驚きます。

また、暑い時期が続いたかと思えば、急にものすごく寒くなっている感覚もあります。地球が温暖化すると日本の冬は厳しくなるとも言われています(※)。
(※)北極海の氷が溶けることによって北極海周辺の大気が暖まり、偏西風帯のジェット気流が北側に押し上げられ、その反動で寒気団がシベリアから中国大陸に向かって、南側に大きく蛇行する。蛇行によって、シベリア高気圧を強める作用が働き、強い寒気が中国大陸から日本列島に南下しやすくなるのがその一因と考えられている。

人間だけなら、エアコンを付けたり着るもので工夫したりすれば生きていくことはできるでしょう。農作業用にもファン付きのベストが開発され、普及しました。

しかし、まわりの環境あっての人間生活です。環境が変われば、人間も生きてはいけなくなるかもしれません。

農家が感じる温暖化

我が家は、代々専業農家でした。主に柑橘を作っていました。

夏に猛暑で畑仕事がしんどいのはもちろんですが、日焼けする実が多くなりました。日焼けしたところは皮がカチカチでむきにくいだけでなく、中の果肉がスカスカでおいしくありません。もちろん出荷もできません。

日焼けする実は日当たりがいいということなので、本来なら一番おいしいはずなのです。

日焼けした実を早い段階でのけてしまうと、次に日当たりのいい実も次々日焼けしてしまうので、秋になって日差しが落ち着いてから、一晩最後に摘果します。せとかのような中晩柑には、白いサンテを一つずつかけていき、秋になると黒サンテにかぶせ替えます。

そのように手間はかかるものの日焼け果にはなんとか対応できますが、対処が難しいこともあります。

秋冬は寒くなる時期が遅くなったため、着色も遅くなりました。また、暖かい日が続いた後に急に寒くなるため、伊予柑にしもやけができるようになりました。しもやけができると傷みやすいため、ジュース用にしかなりません。

ジュースにするのは食品ロスをなくすという観点からはいいと思うのですが、腐敗果を選別する日当代も出ない料金でしか引き取ってもらえず、肥料や農薬代などの経費を考えると、採算ベースからはほど遠い金額です。また、「カルワックス」というしもやけ防止の薬ができましたが、手間もお金もかかります。

そして、寒いときはとても寒くなるため、年を越して収穫するせとか・甘平・なつみ(カラマンダリン)などは実が凍ってしまう年もあります。実が凍ると苦くなってしまうので、ジュースなどの加工品にすらできません。夜通し練炭を焚くといった対処法はありますが、手間やお金は「カルワックス」と同じくかかり、気温によっては限界があります。

主体的な行動で拓く未来

農家見習いとして過ごしていた中で、自然と向きあっている時間が長い分、近年の気候や作物の変化を肌で感じるようになりました。しかし、感じている危機感をどう行動に移せばよいかが分からずもどかしさも感じています。

また、農薬を使う慣行栽培をすべきか、無農薬栽培をすべきかについてもずっと悩み続けていました。農薬が厳しい基準で開発されていることも聞いたのですが、諸外国で禁止されている農薬(※)が日本でまだ使われているのも事実のため、“日本の常識は、世界の非常識”かも!?しれません。
(※)除草剤の1つの「ラウンドアップ」や、ミツバチがいなくなってしまう原因と言われる「ネオニコチノイド系」農薬など。

このままではダメだと声を上げることが大事なのも分かっています。どうせ自分たちの声は政治や上に届かない、とあきらめないことが大切なのも分かっています。

でも、選挙に行くだけでは足りない気がしています。それだけでは世界は変わらない、という絶望感があります。特に若い世代で政治に無関心な人が多いのも、こういったことが原因の一つかもしれません。

それでも大事なことは、どんな状況でもあきらめずに、考え続けるのをやめないことかもしれません。AIが仕事の幅を広げる将来、人間にしかできないことは、「考えること・感じること」だと聞いたことがあります。

主体的に行動できる人を育てるには、学ぶ側が自覚を持つことも必要ですが、そのように導く環境づくりも不可欠です。

この先も、生きている限り一生「考えること・感じること」をし続け、それを行動に移していくことで、よりよい世界の実現を目指していこうと思います。

「持続可能な社会」の主人公は私たち一人ひとりであり、今この瞬間と、これからの行動が問われているのですから。

【参考サイト】
「地球温暖化のせいで寒冷化…」 なぜそんなことが起こるのか
【地球温暖化は嘘なのか】なぜ寒波?冬に寒くなる理由とは (nhk.or.jp)

【参考文献】
『成長の限界 ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』D・H・メドウス、D・L・メドウス、J・ラーンダズ 、W・W・ベアランズ三世 著、大来佐武郎 監訳

この記事を書いた人

山中 美佳(やまなか・みか)

生まれも育ちも、松山市の興居島(ごごしま)。北九州市立大学外国語学部国際関係学科卒業。 学生時代に、持続可能な生活について学ぶ。その後の生活を経て、理想と現実のすり合わせをしたいと思っている。家業の農家見習い兼パン職人。両親と弟の4人暮らし。

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