SDGs連載【第10回】フェアトレードとは?生産者の顔が見える商品で、開発途上国の人たちも幸せに暮らせる社会を/松山市 えひめグローバルネットワーク
持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標「SDGs(エスディージーズ)」。今回は、このSDGsに関する取り組みをご紹介する連載の【第10回】。
モザンビークでの国際協力活動や、ESD(持続可能な開発のための教育)の普及などに取り組むえひめグローバルネットワークの代表竹内よし子さんにお話をお聞きしました。
フェアトレードとは何なのか、竹内さんや同法人が「フェアトレード」に取り組む理由とその中身、そして現在の課題と今後のビジョンなどについて、詳しくご紹介します。
プロフィール紹介
特定非営利活動法人 えひめグローバルネットワーク代表理事 竹内よし子さん
えひめグローバルネットワークは、1998年に国際協力勉強会(仮称)として発足。その後、2005年に特定非営利活動法人として設立。ビジョンは「あらゆる人々が、人として平和な日々をおくることができる持続可能な社会を実現すること」。国際協力活動(平和・人権・環境・防災など)の実践、地球市民教育・ESDの普及、地域・国内・海外の市民や諸団体とのネットワーク構築活動を進めている。
「銃を鍬へ」プロジェクトについて語る、代表の竹内よし子さん
国際協力活動には「対等な一人の人間として向き合う」意識が重要
–えひめグローバルネットワークさんでは様々な活動をされていらっしゃいますが、今回は「フェアトレード」をテーマにお話をお聞きできればと思います。まず「フェアトレード」とは何かについて教えてください。
竹内よし子さん(以下、竹内):はい。まずフェアトレードは、公正公平な取引によって、開発途上国の人々の生活を支援する活動です。現代では大量生産・大量消費が世界規模の課題となっています。実際、安く大量に売られているものの多くは、企業が利益を追求するあまり、誰かに負担がかかる形で大量生産され、過度な農薬が使われるなど、結果的に途上国の貧困や環境破壊に繋がっています。
「フェアトレード」の場合、企業の代わりにNGO(非政府組織)が関与します。そうすると、環境を守り、生産者には約束された人件費を支払い、自立を支援する取り組みも可能になります。多くの商品には「フェアトレード」の認証ラベルが付いていますが、そうでないものもあります。
–竹内さんがフェアトレードに取り組むことになったきっかけは、何だったのでしょうか?
竹内:私は以前、外務省の外郭機関である日本国際問題研究所や、太平洋経済協力会議などの事務局で働いていました。その後、結婚して愛媛県松山市に帰省しました。1998年にJICA(国際協力機構)などによる「国際協力入門セミナー」が開催され、そこでコーディネーターを任されることになり、それをきっかけに6名で「国際協力勉強会」を発足。月に一度、「どんな国際協力活動が良いのか、どうやって関わるのか」などについて、NGOが行っていることを学びました。
学んでいるうちに、支援活動には「対等な一人の人間として向き合う」ことが大切だということに気がつきます。「可哀想だから支援してあげる」のではなく、活動の中から対等な関係性を築く活動こそが大切だと思いました。そうしたなかで出会ったのが、モザンビークで実施されていた「銃を鍬(くわ)へ」プロジェクトです。
戦争で使われた武器を放置自転車とトレード 「生産者の見える」アートも
–そこで、竹内さんも「銃を鍬へ」プロジェクトに参加されるようになったんですね。
竹内:はい。このプロジェクトは、CCM(モザンビークキリスト教評議会)が実施していたもので、内戦が終わった後に戦争で使われた武器を市民から回収し、平和な社会づくりを始めたいと、スタートしたもの。ただ、長く戦争が続いていた地域でしたので、住民も武器をすぐには手放してくれません。武器を持ってきてくれたら、自転車やミシンなど生活に必要な道具と交換できるということを丁寧に案内しながら、徐々に理解を得て、最終的には村の長老が武器をもってきてくれ、みんなの前で自転車と交換しました。そうすると、村の人たちも次々と武器を持ってきてくれたのです。
このプロジェクトを知ったとき、「これこそ対等な関係性だ」「これなら平和な社会に向かっていけるはずだ」と思いました。私は、この活動も「フェアトレード」の一つであると位置付けています。
当時、松山市では放置自転車が社会問題化していました。私は、その大量の自転車を平和利用できないかと、松山市役所に相談に行きました。最終的には、松山市からモザンビークに660台の自転車を送ることができ、自転車1台につき1丁の銃と交換し、村から武器を回収することができたのです。それが最初に取り組んだ「フェアトレード」ですね。
回収された武器は、爆破処理されますが、CCMはモザンビークのアーティストを集めてワークショップをし、武器からアート作品「武器アート」の製作も進めました。
【関連】インタビュー”武器をアートに”/聖心女子大学グローバル共生研究所
えひめグローバルネットワークでは、オリジナルのフェアトレード商品を「フェアトレード・カフェ雑貨WAKUWAKU」というネットショップで販売しています。当団体の扱う商品は、途上国の生産者の顔が見えます。みんな一生懸命に作り、大切に育てています。
まず、ブラジルに住むイバンさんという方が作ったコーヒー豆の販売です。販売して得られた利益はモザンビークの支援にも繋がっています。
他にも、今治市のタオルメーカーIKEUCHI ORGANICさんが、フェアトレードのコットンタオルに、モザンビークの国旗を刺繍した「応援タオル」を作ってくださり、それも販売しています。
今後、モザンビークの伝統的な布「カプラナ」で作ったバッグにモザンビークの女性が一つひとつ丁寧に刺繍してくれた商品や、彼女たちの手作りヘアゴムなども展開予定です。
イバンさんの健康コーヒー
IKEUCHI ORGANIC モザンビーク国旗タオル
【関連】フェアトレード・カフェ雑貨WAKUWAKU
一緒に応援する仲間求む!開発途上国の人たちも、幸せに暮らせる社会を目指す
–「フェアトレード」について、現在課題に感じていること、解決したいことはありますか?
竹内:フェアトレード商品については、どうしても値段が高くなってしまうこと、そして商品を知ってもらうことの難しさを痛感しています。そうなると、やはり継続して作ったり売ったりすることも容易ではなくなってしまうんですね……。
まずは、もっと多くの方にこの事業に関わってほしいと思います。例えば、こういう製品を作れば売れるんじゃないか、こういうPRの方法があるんじゃないかと、「応援」する側のみんなで一緒に考えて作っていけたらいいですね。そして、もっと四国の地元企業と一緒にタッグを組んで商品開発をしていきたいと思います。
他にも、例えば高校や大学の文化祭などで、フェアトレードの製品を売るような活動が一緒にできたらいいなと思います。たとえそれが数万円の売り上げだとしても、それだけでモザンビークの数人の雇用を守ることにつながります。学生たちも、世界で起きていることを学ぶことに繋がりますし、自分たちの活動によって途上国の人たちの栄養状態が良くなったり、仕事や教育に良い影響があったりすると、きっと嬉しいはず。みんながWinWinとなり、笑顔につながるような活動ができたらいいですね。
–「フェアトレード」について、今後のビジョンを教えてください。
竹内:現在製造・販売している製品が、ロットは少なくても良いので在庫を抱え込まず売れるようになっているといいな、と思います。例えば、カフェや美容室に置いていただくなど、協力してくださる仲間も増えて、良いサイクルが回りはじめていてほしいですね!
また、より消費者に身近なスーパーや銀行、郵便局などにもNGOの活動が分かるようなコーナーを設置していただくなど、もっと開発途上国の現状や、その支援活動について知っていただく機会が増えてほしい。それによって、途上国の人たちが幸せに暮らせる社会が実現できたら、すごく嬉しいです。
成田空港「一村一品マーケット」で販売されているモザンビークの布を使ったヘアゴム
編集後記
取材の最後に、それまで一度もお話に出てこなかった「SDGs」についてお聞きしてみました。「えひめグローバルネットワークさんの活動は、SDGsにどう繋がっていますか?」という質問に対して「9番(産業と技術革新の基盤をつくろう)以外は、すべて直接繋がっています」という回答をいただきました。
そして、「SDGsを通じて社会の課題が見えてきたという人のなかに、フェアトレードをやってみたい!と思う人がいたらぜひ連絡ください!」とメッセージをいただきました。一緒に、新しい価値を生み出す仲間を募集されているそう。ご興味のある方は、えひめグローバルネットワークのホームページまで!
【連絡先】えひめグローバルネットワーク