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COLUMN&INTERVIEW

省エネリフォームで後悔しないために。おさえておきたい3ステップ

前回のコラムでは、今年実施された住宅ローン控除の変更内容とこれから求められる住まいのかたちについて書きました。

住宅を“消費”するのではなく、適切なお手入れとともに新たな付加価値を加えながら社会の中で引き継いでいくことが求められつつあります。とはいえお手入れと共に付加価値を高めていくにあたっては実際の費用の負担も気になるところです。加えて断熱性など、住まいの省エネ性能を高める技術は比較的新しいものであるため、高額な工事であればなおさら、実際の工事を業者に委託するにあたっての注意点もあります。

そこで、今回のコラムでは住まいの価値を高める省エネリフォームを検討するなら抑えておきたい、後悔しないための3つのステップを挙げ、解説します。

Step1:家族でリフォームについて話し合おう

省エネリフォームを検討する際、まずはどのような住まいでの暮らしを望むのか、まずは生活習慣の振り返りとともに、どんな省エネリフォームをしたいのか家族でしっかりと話し合いをしましょう。理由は2つあります。

  1. 省エネリフォームは費用がかさみがち
  2. 支援制度には締め切りがある

順に解説します。

1.省エネリフォームは費用がかさみがち

少し古いデータですが、国土交通省「増改築・改築等実態調査結果(2006年分)」によれば住宅のリフォームにかかった費用の1件あたり平均額301万円に対し、「断熱工事」における平均工事金額は356.5万円だったそうです。
ちなみに、もっとも費用が少ないリフォームはエアコンなどの「集中冷暖房設備の設置」で16.3万円。最も費用が高いリフォームは「基礎構造の補強」で522.0万円。断熱工事は二番目に高額でした。
もちろん、実際にかかる費用は住宅の種類や状態によっても異なりますが、断熱性を高める省エネリフォームはその他のリフォーム費用を比較すると費用がかさむ傾向にあります。

最近は需要の高まりと資材調達が困難な状況等を受け、住宅リフォーム費用は全体的に上昇しています。

なんとなく、でリフォーム工事を依頼したところ、想定を超えて費用がかさんでしまった、というトラブルも増えているようです。
あらかじめ家族で最低限どのような省エネリフォームを盛り込みたいのか、しっかりとポイントを絞り込んでおけばあらかじめ費用の目途も立てやすいです。こんなはずじゃなかった、との事態も避けやすいでしょう。

2.支援制度には締め切りがある

省エネリフォーム工事の際は、費用負担を補ってくれるさまざまな支援制度が利用できます。例えば費用の一部を補ってくれる助成制度や税金負担を減らす減税制度がありますが、いずれも適用にあたっては申請が必要です。ややこしいことに、それぞれ異なる締め切りが設けられており、手続きに必要な書類も違うなど、手間がかかります。スムーズな適用にあたっては計画性が大切です。

利用できる減税制度や助成制度は複数ありますが、助成制度については工事業者から説明を受けられる場合も多いです。ここでは比較的情報を集めにくい減税制度を3つ挙げ、あらましをご紹介します。

・リフォーム促進税制

要件を満たせば、最大62.5万円まで所得税負担を減らすことができます。
※太陽光発電設備設置工事を併せて行う場合は最大67.5万円となります。
※耐震、バリアフリー、同居対応リフォーム、太陽光発電設置工事をすべて行う場合は最大105万円となります。

所得税は平たく言えば、1/1から12/31までの1年間の間に発生した個人の“もうけ”に対して課される国の税金です。

実際にいくらの所得税負担を減らせるかは工事金額によって異なりますが、
基本的に工事費用合計250万円までは省エネ工事費用の10%が控除額となっています。
※250万円を超えた場合、控除率は5%になります。
利用にあたっては確定申告が必要です。提出の際には以下の書類も必要となります。

(※図は国税庁「No.1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」より抜粋。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1219.htm )

※リフォーム促進税制はローンを組まなくても利用できますが、ローンを組んで利用する場合は、住宅ローン控除と併用はできませんので注意しましょう。

・住宅ローン控除

10年以上のリフォームローンを利用する場合に利用できます。

控除期間は居住を開始した年から年間で、最大140万円所得税負担を減らすことができます。

(※図は国税庁「No.1211-4 増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」より抜粋。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-4.htm

前述のリフォーム促進税制同様に、利用にあたっては確定申告が必要です。確定申告の際は以下の書類が必要となります。

(※図は国税庁「No.1211-4 増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」より抜粋。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-4.htm

ちなみに会社員の方は、2年目以降は年末調整で手続きを終えることができます。

・家屋の固定資産税の減額

固定資産税は、保有する土地や建物などの1月1日時点の評価額に応じて課される市区町村に支払う税金です。適用要件を満たすリフォームを行った場合、1年間固定資産税額の1/3が減額されます。※家屋免責120㎡相当分まで。

適用にあたっては、工事完了後3カ月以内に市区町村への申告手続きが必要です。

Step2:必要な費用をリサーチしよう

家族と話し合い、やりたい省エネリフォーム工事のイメージが固まったら、次は必要な費用をリサーチしていきましょう。

まずはご自身でインターネットや書籍を活用して、費用の相場を確認しておきましょう。省エネリフォームも様々なものがありますから、例えば窓断熱の工事など10万円に満たない負担で済む場合もあります。一方で外壁を含みおうち全体の断熱性能を高める工事などは、数百万の費用がかかりますから、そのような場合はローンの利用も想定されるでしょう。

住みながら工事ができるかもチェックしておきましょう。リフォーム工事の間、家で生活できれば、ホテルなどでの宿泊費用が不要になります。

リフォーム費用が長期的に家計を圧迫しそうなのであればリフォーム計画を改めて振り返る必要があります。

例えば生活の中で使う部屋が限られているのであれば、家まるごと工事を行うのではなく、必要な部屋に限定しての断熱リフォーム工事に変更するなどの方法も検討できます。

また、費用のリサーチと平行して、インスペクションを実施することも重要です。
省エネリフォームに関わらず、いざリフォーム工事を始めてみると、修繕が必要な箇所が次々見つかって結果的に想定を超えた費用が必要になった、というケースも案外多いようです。
インスペクションは目視や計測などによって住宅の基礎や外壁のひび割れ、天井の雨漏りなどの劣化・不具合などが発生しないかを調べる「建物状況調査」です。専門の技術者が調査を行います。あらかじめ住宅の状態を把握しておくことで補修の必要性を踏まえた適切なリフォーム計画をつくることができます。

ちなみに、今年の4月から、リフォーム・修繕の際にはアスベストの含有を確認する事前調査がすべての住宅に義務付けられました。事前調査費は一般的な木造2階建て住宅で20~40万円程度とされています。

法律を含めリフォームを取り巻く状況は変化しています。おひとりではなく専門家も交えた事前の費用リサーチが大切です。

Step3:事業者を見極めて契約しよう

費用感を把握して予算を決めたら、複数の事業者に「相見積もり」を取ってみましょう。

その際は予算や工事内容を同じ条件で依頼することが大切です。また相見積もりであることや無料で見積もりを作成してほしいということもあらかじめ伝えておきましょう。

複数の事業者から見積もりを取ると費用の目安やそれぞれの対応の違いもわかります。

見積書の中に「○○一式」などと、ざっくりとした記載をしてくる事業者には注意しましょう。本当に実績のある事業者であれば、利用する資材の品番なども記載しています。詳しい内容を確認して、満足のいく返答が返ってこない事業者は省エネ工事の実績が少ないのかもしれません。断熱は気密性がとても大事で工事には精度が求められます。見積もりをお願いしながら合わせて事業者のこれまでの実績についても確認しましょう。

(断熱性能を高める工事を実施するにあたっては一次エネルギー消費量や外皮性能の算出が必要ですが、中小工務店や建築士の半数が計算できない、との国土交通省の調査結果もあります。)

家計と照らし合わせた取捨選択を

費用のかさみがちな省エネリフォームで失敗しないために、押さえておきたい3ステップについて解説しました。

住まいのリフォームに関する工事ではさまざまな事業者との関わりがあります。だからこそ工事にあたってはその影響の全体像が見えづらいという側面もあります。

加えて省エネリフォームは比較的新しい技術のため、地方においては信頼できる事業者を選びたいと思っても選択肢がかなり限られるケースも想定されるでしょう。

そのため、リフォーム工事で後悔しないためには専門家を上手に活用する利用者側の知識も必要になってきます。

当たり前のようですが、リフォームをして「そこで終わり」ではありません。住まい同様、家計の持続可能性もまた大切です。特に年金生活においては想定外の貯蓄の取り崩しはご自身の万が一の選択肢を大きく減らしてしまう可能性も高まります。

専門家の力も借りながら家計と照らし合わせつつ無理のない省エネリフォーム計画をじっくりと考えていくことが大切です。

*今回の記事執筆にあたり、株式会社LIXILの釘宮貴志さんにご協力いただきました。釘宮さん、ありがとうございました。

この記事を書いた人

内田 英子(うちだ・えいこ)

内田英子 CFP、FP1級、消費生活アドバイザー
FPオフィス幸せ家族ラボ代表。証券会社、保険ショップ勤務を経て、独立。 かつての専業主婦経験も活かしながら、子育て世帯を中心に家計の総合医として暮らしの健康を維持するあらゆる選択のアドバイスを金融機関から完全に独立した立場で行っている。
HP:https://fplabo-happyfamily.com/
Instagram:https://www.instagram.com/eiko_fp/

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