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COLUMN&INTERVIEW

ハカセと学ぶ気候変動と自分たちのつながり 第二回:今、どんなことが起きている?

今、どんなことが起きている?

いま、気候変動としてどんなことが起きているのか。このサイトを読んで下さっているみなさんは既にご存じだったり、感じていらっしゃったりすることも多いでしょうが、日本だけでなく、世界各地で豪雨や高温が多発しています。以下に紹介する事例が全て研究され、気候変動の影響だと断言できるわけではありませんが、異常なことが多発しているということと、このまま温暖化が進むとこういった災害が増えると思って読んでみてください。前回の記事はこちら

1.豪雨

まずは豪雨について。日本での近年の豪雨災害の事例(気象庁)。今年も史上最強と言われる台風14号が日本を縦断しましたし、2021年の熱海の土砂災害は記憶に新しいですが、2020年は熊本の球磨川、2019年は長野の千曲川の氾濫、2018年は岡山の真備での水害、2017年は広島の豪雨など、毎年のように豪雨災害が起こるようになりました。「50年に一度の〜」「観測市場最大の〜」というフレーズを最近は毎年聞くようになっています。

気象庁のこちらのデータは、1時間に50mm以上の雨の回数です。

やはり大雨は増えていますし、将来このまま温暖化が進むと、より激しく降るようになると推定されています(気象庁)。

海外でもオーストラリアでは年間降水量の3/4が5日間で降ったり、イタリアでは半日で半年分の雨が降ったりと、日本よりさらに激しい雨が観測されています(Yahoo news)。

2.高温

温暖化の影響で、もちろん高温も世界中で観測されています。イタリアのシチリア島で48.8度カナダで49.6度アメリカでも47.8度など、40度代後半を記録する地点が増えています(気象庁)。なんと南極でも、平年より40度近くも高い温度になったことが観測されるなど、異常が観測されています(WMO)。北極でも他地域より2倍の速度で温暖化が進んでいます(NOAA Arctic Report Card 2021)。日本でも、近年暑い日が増えていることはみなさん実感されていると思いますが、この100年で1.28度のペースで温暖化しています(気象庁)。

愛媛県はそれより早く、100年間に1.8度のペースで温暖化しています(愛媛県地球温暖化対策実行計画)。地形や都市化の程度など、様々な要因によって気温は変わるので、温度の上昇は一様ではありません。

3.その他の災害

豪雨や高温だけでなく、低温や干ばつ、高潮などの被害も世界中で発生しています(気象庁)。

4.被害件数と被害額

こちらは世界で報告された災害の数と被害額のデータですが、数も被害額も増えています。(WMO資料を日本語訳、一部改変)

世界中がなかなか大変なことになっている、ということが理解できたでしょうか。調べれば調べるほど、こういうデータはたくさん出てきます。そんな世の中になってしまっています。

このような、世界中で起きている気候変動のデータ(過去や将来予測も含む)を分析し、政策決定のためのデータを提供しているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)という機関があります。気候変動に興味を持っている方なら一度は聞いたことがあるでしょう。

1988年の設立以来、数年おきに報告書が発表されてきていて、現在の最新版は2021年のもの。これによると、全世界でみると、1850-1900年に比較して、2010-2019年の世界平均は1.07度の上昇となりました(環境省によるIPCC資料の日本語訳)。

ここまで見てくると、確かに気候変動は起きていそうだし、被害が増えているということは理解していただけたと思います。しかし、まだ「とは言え自然な変動なのでは?」とか言って信じようとしない方もいるかもしれません。そんな方のために、もう少し長い時間スケールでの今の時代について触れてみたいと思います。

地球史スケールで見たときに

第一回目の連載では、地球科学者たちが世界中様々な場所からの様々な証拠をもとに、過去の気候変動を解き明かしてきた、ということをお伝えしました。それはもちろん現在も続いています。

例えばアメリカのスクリプス海洋研究所が 1958 年からずっと、ハワイのマウナロア山の山頂で空気をつかまえ、大気中の二酸化炭素の量を計測し続けています。それが公表されているのがこちらのサイト

観測開始以来 60 年以上にわたって、ずっと上昇のトレンドにあることがわかると思います(グラフに毎年毎年山と谷があるのは、夏になると植物が元気になり、二酸化炭素をたくさん吸収するからです)。そう、増え続けているんです。これだけだとどれだけ今が異常なのか、ということがわからないので、もっと長い時間スケールで。

このデータを、氷床コアのデータとくっつけて 2,000 年分で見たのがこちらです。

「氷床コア」というのは、南極観測隊の先輩たちが南極の内陸部から 3,000 mもの厚みの氷を円柱状に掘り出してきたもの。降ったふわふわの雪が空気を閉じ込めながらそのまま積み重なり固まっていくので、掘れば掘るほど昔の空気を取り出せるわけです。

西暦 1,750 年頃までは大気中の二酸化炭素はそんなに変動しなかったのですが、、それ以降一気に上昇している、というのがわかると思います。産業革命以降の化石燃料の使用により大量の二酸化炭素が大気中に溜まるようになり、これほどまでに濃度が上がっています。

さらにこれを、さらに長い時間スケールの 80 万年分で見たのがこちら。

80 万年の時間スケールでみると、大気中の二酸化炭素濃度の値は 170 – 280 くらいの幅の中である程度周期的に変動してきましたが、現代はその変動幅から大きく振り切れて 400 を超えてしまっているのがわかると思います。これが気候変動の最も大きな要因です。

私たちの化石燃料の使用によって、もともとの地球の仕組みとしての変動から、大きく逸脱してしまったわけです。言い換えると、私たちの活動が地球の気候や環境をも変えるほどのインパクトを生み出すようになってしまった。ジュラ紀、白亜紀、、などの時代に続いて現代が「人新世」と言われるようになったのは、それほど大きな意味があります。

地質学的時間スケールで見ても、現在が異常だということはわかっていただけたと思います。ではこれからどうなるのか?ということについて、次回は見てゆきます。

この記事を書いた人

大岩根 尚(おおいわね・ひさし)

1982年宮崎市生まれ、環境活動家。株式会社 musuhi 取締役。 2010年に東京大学で環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、53次南極観測隊として南極内陸の調査隊に参加。帰国後は研究者を辞め、鹿児島県三島村役場のジオパーク専門職員として働く。2015年に認定獲得した後、役場職員を辞めて同村の硫黄島に移住、起業。硫黄島での自然体験、研究、SDGs 関連のサポートなど幅広く活動中。特に、気候変動対策としては書籍 Drawdown や Regeneration の翻訳協力、鹿児島県大崎町のサーキュラーヴィレッジラボ所長、個人レベルのアクションを創出する講座の開催など、さまざまなレベルでの活動を展開している。

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