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COLUMN&INTERVIEW

50年後の子どもたちへつなぐ森づくり

「由良野の森」を知っていますか?

「由良野の森」は久万高原町の中心部から20分余り奥山にあります。

そこには、訪れた人を懐深く包み込んでくれる森があり、人と自然がつながっていることを感じられる、居心地の良い場所です。ここでは草木染や羊の毛刈り、沢登りといった里山の生活体験、森の学び、交流を通して、持続可能な社会のために何が必要かを「五感」で感じることができます。

私も10年以上前から折に触れて家族で通い、様々なイベントに参加してきました。イベントが楽しいのはもちろんですが、「森林浴」のおかげで心も体もすっきりと軽くなっているのを感じています。

【藍染め体験(2017)】

始まりは1本の木から

【由良野の森全景 由良野の森は14ha】

この森を管理しているのは、特定非営利活動法人 由良野の森の代表理事である鷲野宏さんと奥様の陽子さんで、森作りは木や生き物などの専門家、運営委員、会員、ボランティアによって支えられています。

しかし、最初から豊かな森だったわけではありません。

農協の桑畑だった場所を、2003年に由良野の森の発起人で、松山市内で医師をされていた亡き清水秀明氏が購入し、以前から知り合いだった鷲野ご夫妻に管理人として声をかけ、広葉樹の森と里山の再生を目指して、一本の木を植えることから始まりました。

医師として人の生死に関わって来られた清水氏は、「健康のために施設を作るより、森を作ろう」「そこに人が集える場所を作ろう」と思われたそうです。

この16年間で少しずつ森は再生し、2017年からは特定非営利活動法人 由良野の森になりましたが、変わらないのは「体験」を何よりも大切にしていることです。

どんな人にも体験を

「普段森へ来られない子ども達にも自然体験をしてほしい」という鷲野さんたちの思いが形になるという話を聞いたある日、私も自然体験に同行させて頂きました。

この日は「由良野の森」、「愛媛キワニスクラブ」、「児童養護施設松山信望愛の家」の3つが共催となり、由良野の森で1日を過ごしました。

午前中はヤギにえさやりをしたり、ツリーハウスに上ったりと森を散策。

お昼ごはんはうどん。自分で伸ばして切ったうどんを薪窯でゆでて頂きました。

午後からは沢登り。子どもたちはちょっと水に濡れながらもサワガニを見つけたり、水や川の音や土や苔の匂いを感じたりしながら、それぞれのペースで登り切っていました。

私には結構な距離に感じられましたが、滑らない石を見つけたり、横倒しの木を跨いだりしながらたどり着いた沢から見上げる木立の緑がとても心地よかったです。

子どもたちの顔が全然違いますね、と施設長が帰り際に言われていました。帰る頃、池の周りを走り回る子どもたちの笑顔や「自然の中でとてもいい気持ちになりました」「また来たいです」といった感想が印象的でした。

由良野の森の活動は本当に様々で、森の手入れや整備の他、ブナの森作り、子ども達への里山生活体験、学校や社会で生きづらさを感じている人の居場所づくり、企業向けの社会貢献活動などを行っています。

由良野の森が目指すもの

【右から鷲野宏さん、陽子さん、イスラエルからお手伝いに来てくれたNoa Kirshさん】

「森に来て、地面に触れて、匂って、とにかく感じてほしい。体験すれば自然と視野が広がります。環境問題を語って誰かを責めるより、見え方が広がる人が増えることの方が確実で近道だと思います」(鷲野宏さん)

「今の種のいくつかが森になって、50年後に生きている人たちが、ちゃんと食べるものがあって、水があって、ちゃんときれいな空気を吸えていますように。生きることを楽しめていたらいいなと思います」(鷲野陽子さん)

鷲野ご夫妻が森に住み始めて16年。年々山の荒廃を感じ、地球温暖化が思った以上に進んでいることをひしひしと肌で感じると言われました。

そのため、由良野の森が始まって以来ずっと大切にしてきた「自然と人との共生依存」のカギとなるのはやはり森の再生であるという想いから、由良野の森では今「ブナの森づくりプロジェクト」として、四国の奥山を人工林になる前の70年前の姿に戻したいと計画し、活動をしています。

この活動は、ブナの種を拾い、苗を育て、まずは山のてっぺんにブナを植えることで、育ったブナが種を落とし、長い年月を経て元の森に戻るためのものです。

森林の問題はとても複雑で、林業、環境保全、生態系の問題が里の人口減少ともからみあっています。どんなに技術革新が進んでも、空気を作る森の再生にはとてつもなく時間がかかるから、この活動は、未来のための伐らない森、「社会的共通資本」としてのグリーンインフラ整備です。

由良野の森は、森の再生のための実績と仕組みを作り、国内で取り組んでいる各地とつながって、パッチワークのように広げていくことを目指しています。

ブナの実は6年に1度しか豊作にならないそうです。今年はその豊作の年。私も種拾いに参加しようと思っています。

今後の活動については、HPをご覧頂き、事前連絡の上訪問ください。

特定非営利活動法人 由良野の森

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この記事を書いた人

児玉 三由(こだま・みゆき)

Act Kie(アクトキエ)代表。アロマ空間プロデューサー。講師。アロマセラピスト。 家族の健康管理に20年以上アロマテラピーを利用してきた経験をいかし、2015年に起業。間伐材を利用した日本産、特に愛媛産の森林のアロマの普及に力を入れている。愛媛産の森と柑橘精油を使ったフレグランスアロマ「Kie(キエ)」開発。香りを通して自然と繋がり、人も地球も健やかになる暮らし方を提案中。 (公社)日本アロマ環境協会資格認定スクール運営。 https://himawari-aroma.com/ https://www.instagram.com/act_kie