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COLUMN&INTERVIEW

感じて考える地球の未来 ~今治自然塾~

環境問題を考える時、余りにも壮大過ぎて遠くのことのように感じてしまう、とか、まじめで難しいと考えたことはありませんか?

五感をフル回転させると、いつもとは違う感じ方ができるかもしれませんよ。

今回は、楽しみながら体験を通して地球環境を考えることができる「今治自然塾」をご紹介します。

1,体験すれば、ごく自然に考えられる

今治自然塾は今治市内、近見山のふもとにある、しまなみアースランドの中にあります。

ここは自然に親しみ、体験を通じて自然との共生を学ぶことを目的に平成23年につくられた公園です。

最も特徴的なのは、監修元である、北海道の富良野自然塾(※1)で研修を受けた、インストラクターと呼ばれる専門のガイドがいることです。

私が以前、今治自然塾の環境教育プログラムを体験した時も、お話が本当に面白く、ひきつけられたのを覚えています。

公園内は誰でも自由に利用できますが、今治自然塾ではあらゆる年代の人が環境問題をより深く理解し、自分たちの暮らしを見つめるための二つの有料体験プログラム「moricco(もりっこ)」と「環境教育プログラム」を提供しています。

(※1)NPO法人C・C・C富良野自然塾
ドラマ「北の国から」「風のガーデン」などで知られる脚本家、作家の倉本聰氏が塾長をつとめ、閉鎖したゴルフ場を森に還していく「自然返還事業」と「環境教育事業」を2本柱として活動を行っているNPO法人です。自然塾は全国6か所に広がっており、四国で体験できるのは今治だけです。

2,moricco(もりっこ)

幼児を対象とした今治自然塾オリジナルのプログラムです。

すべての生物の子孫が幸せに暮らせる未来を創ることを目指していて、四季折々の昆虫やカエルなどの生物、植物と触れ合ったり、木登り、崖登り、川遊びやたき火などの自然体験をしたりできます。

私が訪問した6月のある日も、市内から保育園の子どもたちが参加していました。

森に入る前には、インストラクターからまず自然や生き物との関わり方を教わります。

すると子どもたちは、人間本位ではなく生き物の気持ちになって、生物に配慮した触れあいができるようになるのだそうです。

また、園内では季節によっては木の実や栗拾いもできますが、「動物や虫さんの食べる分は残しておくんだ」という考え方がごく自然にできるようになるそうです。

3,環境教育プログラム

もう一つは、小学校高学年から大人を対象にした環境教育プログラムで、富良野自然塾と同じ内容を体験できます。

4つのコースを2時間かけてインストラクターと巡ることで、五感を使って地球を知り、環境問題を学び、未来を考えるきっかけづくりになることを目指しています。

①「緑の教室」

森が見える池のほとりのベンチに座り、木や葉っぱを眺めながら耳を澄ませ、風を感じます。すべての生物が生きていく上で最も必要な空気と水を支えているのは森で、人間が生きていくために本当に大切なものは何か、ということを考えます。

②「裸足の道」

普段よく使っている視覚以外の感覚をフル活用する体験をします。

裸足で目隠しをして軽石や草、砂の道を歩くうちに、段々と感覚が研ぎ澄まされ、自然の音や鳥や虫の鳴き声が聞こえたり、足の裏に地面の温度を感じたり、匂いを感じたりして、全身で地球を感じます。

環境問題を考える時にも、五感で変化に気づくことが大切だということに気がつきます。

③「石の地球」

次に見えるのは直径1mの大島石(※2)でできた地球です。

地球の内部や表面の構造、地球と太陽との距離の話などから、地球は偶然が重なってできた奇跡の星だということが分かります。

私はインストラクターから水の話を聞いて、今当たり前に飲んでいる水がいかに貴重なのかということを感じました。

(※2)大島石
愛媛県今治市大島特産の花崗岩の一種で高級石材として知られ、建材や墓石として利用されています。

④「地球の道」

46億年の地球の歴史を460mの距離に置き換えて、“地球”と“生物の誕生と進化”の物語を過去からたどり、私たち人類の生き方や未来について考えます。

一見、両側に大島石が積まれたただの遊歩道のようにも思えますが、インストラクターのガイドが加わることで、生き生きとドラマチックに「地球誕生から現在までを疑似体験できるわくわくゾーン」に一変するから不思議です。

そして全てを体験した後には、自然と心の内で「これからの地球」について考えている自分がいました。

この環境教育プログラムは、今治市内に通う小学生たちが在学中に必ず体験することになっていて、県内にある会社の社員研修としても利用されています。

4,大切にしていること

今治自然塾では体験を通して「自分で気がつくこと」をとても大切にしています。

公園内には、ネイティブアメリカンに言い伝えられているという「地球は子孫から借りているもの」と刻まれた石碑があります。

借りているものだから、きれいに返そう。そのためにどうすればいいかを一人一人が考えて行動しよう。という自然塾創始者の倉本聰さんの思いでもあります。

今回ご紹介したプログラムは、現在は主に各種団体向けに行われていますが、参加者10人以上で個人のグループでも申し込むことができます。また、定期的にイベントが開催されており、10人未満でも体験できる場合もあります。

こんなに素晴らしい体験ができる今治自然塾のプログラム、今後はぜひ県内各地に住んでいる子ども達にも、そして我々大人も体験できる機会がもっと増えるといいな、と思いました。

【参加方法・問い合わせ先】しまなみアースランド
【参考サイト】富良野自然塾

 

この記事を書いた人

児玉 三由(こだま・みゆき)

Act Kie(アクトキエ)代表。アロマ空間プロデューサー。講師。アロマセラピスト。 家族の健康管理に20年以上アロマテラピーを利用してきた経験をいかし、2015年に起業。間伐材を利用した日本産、特に愛媛産の森林のアロマの普及に力を入れている。愛媛産の森と柑橘精油を使ったフレグランスアロマ「Kie(キエ)」開発。香りを通して自然と繋がり、人も地球も健やかになる暮らし方を提案中。 (公社)日本アロマ環境協会資格認定スクール運営。 https://act-kie.com/ https://www.instagram.com/miyuki.actkie_aroma/

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