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COLUMN&INTERVIEW

お洋服への愛、人への愛、地球への愛、愛あればこそ~「Sa-Rah」帽子千秋さんへのインタビュー~

こんにちは。おしゃれすることが大好きな山中美佳(ごごQ)です。
これまでも、補正をしながら長く着ることをモットーにおしゃれを楽しんできました。

ファッションはSDGsのGoal12「つくる責任 つかう責任」と深い関わりがあり、近年ファッション業界の問題に焦点が当たることが多くなりました。

綿花栽培大国であるインドでは児童労働が行われ、製造拠点のバングラデシュでは劣悪な労働環境のもとで服を作ることを余儀なくされています。
中国の新疆ウイグル自治区では、少数民族であるウイグル族の人たちの強制労働で生産された疑いがあるという人権問題が明らかになりました。

このように様々な問題点を抱えながら作られた服が、短期間のうちに大量に廃棄され、そのほとんどが焼却処分のためにCO2排出の原因にもなっています。

2020年の統計によると、日本の国内新規供給量は計81.9万トンに対し、その約9割に相当する計78.7万トンが事業所及び家庭から使用後に手放されると推計され、このうち廃棄される量は計51.0万トンと、手放される衣類の64.8%にもなります。(環境省HP

みなさんは、このような現状をご存知でしたか?どのような感想を抱いたでしょうか?

これからの私たちのサステイナブルな暮らしとファッションの関係性についてのヒントを伺うために、今回、長年地球にやさしい洋服作りをされている、愛媛県大洲市の「Sa-Rah」帽子千秋さんにインタビューをさせていただきました。

帽子千秋さんプロフィール

1970年、愛媛県大洲市生まれ。娘のための服作りからスタートし、2000年に通信販売を始められました。娘の成長に伴って大人向けの服を製作。2009年、大洲市五郎にショップ「Sa-Rah」をオープン。ヨーロッパリネンと天然の貝ボタンを使用し、自然に還る素材での洋服作りを続けていらっしゃいます。※Sa-Rah


Sa-Rah Market official(YouTube)

インタビュー

――天然素材を使う、セールをしないなどのやり方は、SDGsが言われるようになる前から、帽子さん独自の考え方から生まれたように感じます。

――帽子千秋さん(以下、帽子) 3~4年前にオーストラリアのメルボルンに行ったときに、パーマカルチャー(※)っていうのに出会ったのですが、そのときに私が素材選びでも長年着られる麻を使っているのと結びついて衝撃だったんです。日本はやっとここ最近ですよね、言われ始めたの。ああ、やっとやっと!と思っています。

※パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた造語。持続可能な循環型の農業をもとに、人と自然がともに豊かになるような関係性を築いていくためのデザイン科学概念。

――洋服のデザインをシーズンごとに変えるのではなく、同じものを使えば長く着られると思うのですが、「Sa-Rah」さんの洋服のデザインは長く着続けられるデザインを意識されていますか?

――帽子 少しずつ改良はしていますが、ずっと同じデザインを使い続けています。7年前に高知で出会った人たちが楽団を結成するというときに作ったワンピースがあるのですが、<kochiワンピース>といって、もう7年ぐらいは作り続けています。デザインだけではなくて色も、流行は逆にお客様に教えてもらうくらいです(笑)。「今、自分が作りたい色」で作っています。結果的に流行と同じでも、そのときに私が作りたい色だった、っていうことなんです。

――先日、「2nd  Use Market」というイベントをされたと伺いました。サンプル品や、ちょっとした布のヨレがあるもの、また過去に「Sa-Rah」さんで購入された方から直接ブランドが次の方へ販売するという新しくて珍しい取り組みでした。

――帽子 あなたたち(洋服)素敵よ。もう一回出番があるよ。という思いをこめて。でも、過去に買われていったお洋服たちが返ってきて、それを開けるのが実は怖かったんですよね。自分がどういう感情になるのか。前日まで開けられなかったんです。

でも、いざ開けてみたら、里子に出していたお洋服たちが愛されて豊かに育って帰ってきた、っていう里親さんからの便りだった、ってことに気付いたんです。よかったあ。愛されてたんだなあ、って心から嬉しく思いました。

それと、「Sa-Rah」の服はお直し率も高いんです。お直しも受けているのですが、ほつれたりしても、丈が合わなくても、みんな直しながら着てくれるんですよね。

――SDGsのGoal8に「働きがいも 経済成長も」というのがあります。『Sa-Rah』という本にも書かれていましたが、働かれているスタッフの方たちをとても大切に思われていますね。

――帽子 そう。みんなに、「おしゃべりして」って言うんです。おしゃべりして楽しい気持ちで作っていると、服に気持ちがこもります。そういうお洋服を売りたいんですよね。

そして、みんなに朝来る時間を決めなくていい、って言っています。自分の気持ちが落ち着かないときに作らなくてもいいし、縫子さんの家庭を優先して欲しいんですよ。

――最後に。2018年の西日本豪雨で、住まれいてる町もお店も甚大な被害を受けました。温暖化の影響などを感じましたか?

――帽子 自然に対して敬意を払うんです。自然には抗えないし、従うのみ。自然を受け入れて、自然を味わう。だから、西日本豪雨での被害について恨むのではなくて、自然を受け入れ、ここにいることを決めた自分がここでどう生きるのかを考える。

自然を正しく恐れて、防災意識を持つということが問われているのではじゃないでしょうか。自然に迷惑をかけないぞ、と思うことが、モノづくりにも生かされているのだと思います。

――そこでまたSDGsにもつながりますね。

取材を終えて

今回のインタビューの間、帽子さんがよく口にされていたのは「自責・他責」や「心豊かに」という言葉でした。自分軸を持つことの大切さを言われるのと同時に、他者や地球を思いやることも大事にされていました。

タイトルにもありますが、まず愛することが出発点で、だからこそそれに伴う行動に反映されていました。そして、それは帽子さんが特別なのではなく、小さいころから誰もが備わっているはずですよ、と。

私たちはついつい目の前のことにとらわれがちですが、帽子さんが考えていることはとても長いスパンのことであり、それは私たちの人生においても同じこと。

SDGsについて考えることは、私たちの生き方そのものを考えることなのだとあらためて気付かされました。

SDGsのゴール目標の達成には、私たちの生き方そのものが問われているのかもしれません。

 

参考サイト
・「インド・コットン生産地の児童労働
・「月収3900円…世界のファストファッション工場、バングラデシュの苦境
・「新疆ウイグル自治区の綿製品 日本企業で使用見直しなど対応へ
環境省データ

参考文献
・『Sa-Rah』帽子 千秋(襟巻編集室)

この記事を書いた人

山中 美佳(やまなか・みか)

生まれも育ちも、松山市の興居島(ごごしま)。北九州市立大学外国語学部国際関係学科卒業。 学生時代に、持続可能な生活について学ぶ。その後の生活を経て、理想と現実のすり合わせをしたいと思っている。家業の農家見習い兼パン職人。両親と弟の4人暮らし。