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COLUMN&INTERVIEW

増え続ける海洋プラスチックごみ

朝目が覚めて、顔を洗いに洗面所に行くと、歯磨き粉をプラスチックのチューブからひねり出し、ナイロン毛の歯ブラシに乗せて、歯を磨きます。

歯ブラシの持ち手も、コップもプラスチック製でしょうか。

手を洗うときには、プラスチック容器に入った液体石けんを、髪をとかすクシも、プラスチック製のものを使うかも知れません。

このように、私たちは多くのプラスチックに囲まれて生活をしています。

プラスチックが増えたことによる海への影響

①海洋プラスチック問題の現状

現在、年間800万トンのプラスチックが世界中の海に流れ込んでいると言われており、2050年までに海洋中のプラスチックの量が、魚の重量を超えると予測されています。

今や海洋プラスチックの問題は世界全体で取り組まなければならない問題となっているのです。

②マイクロプラスチック問題

マイクロプラスチックとは、5mm以下の小さなプラスチックのことをいいます。マイクロプラスチックは発生源の違いから大きく二種類に分けられます。

一種類目は、ポイ捨てされたり適切な処分がされなかったりしたことにより放置された大きなサイズのプラスチックが小さな破片となったものです。

街に捨てられたペットボトルやレジ袋などのプラスチック製品は、風や雨などによって運ばれ、側溝に流れ込み、川から海へと運ばれる過程で、紫外線や波の影響を受けてもろくなり、やがて小さな粒子になります。

二種類目は、歯磨き粉や洗剤、化粧品などに使われているスクラブ剤に入っているマイクロビーズと呼ばれるマイクロサイズに作られたプラスチックです。

マイクロサイズに作られているため、小さすぎてフィルターを通過し、そのまま川、そして海へと流れてしまい、微生物などによって分解されません。そのため、半永久的に海のごみとしてたまり続けてしまいます。

学術誌「Geochemical Perspectives」で発表された研究論文によると、海の最も深いところに大量のマイクロプラスチックが積もっているという調査結果があります。

論文では、海に溜まったマイクロプラスチックを小さな魚が食べ、その魚をウミドリや大型の魚が食べ、食物連鎖を通じて、私たちの体内にも蓄積されるリスクが指摘されています。

また、人間の便の調査では、人種や住む地域に関わらず、マイクロプラスチックが含まれていたという結果が出たそうです。

世界で行われている海洋プラスチックを減らすための対策

現在、世界で、また日本ではどのような対策がとられているのでしょうか。

対策①プラスチック製買い物袋に対する規制

日本では、2020年7月1日から、全国の小売店でのレジ袋の有料化が始まりました。エコバッグを使う人が増えたことでしょう。(前回コラム:レジ袋有料化から1年~地球・私たちにもたらした影響とは~

また、現在のようにマイクロプラスチックが注目される以前から、ヨーロッパではレジ袋の規制が始まっていました。

1991年にイタリアの海岸に打ち上げられたクジラの胃から50枚ものレジ袋が見つかったというニュースを機に、それまで無料配布されていたレジ袋を有料化する動きがヨーロッパで高まりました。

2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告書によると、世界の127カ国がレジ袋の法規制を実施し、83カ国は無料配布を禁止しています。

対策②各国の取り組み

EU(欧州連合)は2019年5月21日、海洋汚染を防止するため、使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案を採択しました。

ストローやカトラリーなどの使い捨てプラスチック製品が禁止の対象です。中国でもEU並みの禁止規制を導入していく計画を発表しています。

他にも、国ごとにどのような対策が取られているのか調べてみると、以下のように、たくさんの情報が出てきました。

・フランス
使い捨てプラスチック容器を原則使用禁止。

・イタリア
マイクロプラスチックを含有する洗い流せる化粧品の製造、マーケティングを禁止。

・イギリス
2020年10月より、プラスチック製ストロー、マドラー、綿棒の配布および販売を禁止。

・台湾
2019年から2030年にかけて、段階的にプラスチック製ストローの完全使用、小売店における無料のプラスチック製ショッピングバッグ、使い捨て容器などの提供を禁止。

・サウジアラビア
厚さ250ミクロン以下のポリエチレンまたはポリプロピレンを使用した使い捨てプラスチック製品の製造・輸入を禁止。

・ケニア
プラスチック製レジ袋の輸入・製造・使用・販売を禁止。

まとめ

軽量で加工がしやすく丈夫であるプラスチックは、記事の冒頭に挙げたように、今や生活に欠かせないものとなっています。

ごみになる前のプラスチックは、私たちの生活に安全性や利便性をもたらしてくれる存在ですが、適切な処理がされていないことで、さまざまな問題が起こってしまうのです。

ごみとなったプラスチックは、放置されれば景観の美しさを損ねるだけでなく、マイクロプラスチックとなって海を汚し、私たち人間を含む生き物に影響を及ぼす恐れがあります。

また、プラスチックの原料は石油であるため、燃やせば二酸化炭素を発生し、地球温暖化を進める原因にもなってしまいます。

地球温暖化が進めば、異常気象・自然災害を引き起こす可能性が高くなるでしょう。海洋プラスチックの問題は、さまざまなところに影響が及ぶとても大きな問題なのです。

終わりに

海は地球の7割を占め、たくさんの生物が住んでいます。森林よりも二酸化炭素を吸収し、海のサンゴ礁は豊かな漁場を提供してくれます。

私たちは陸に住んでいますが、海に助けられ、また海で生まれた資源を消費して生きているのです。

今年の夏、海へでかけたり、その予定を立てたりした人は多いのではないでしょうか。

私にも海にまつわる思い出がたくさんあります。

海の近くにある祖父母の家に行った時に砂浜で貝殻を集めたこと、水中遊覧艦で海の中を見ると普段は身近に感じていた海がとても神秘的なものに思えたこと、海のある街に住んだ幼少期、新鮮で美味しい魚をたくさん食べられたこと。どれも素敵な思い出ばかりです。

私たちの生活を支えてくれる豊かな海を未来の子供たちに残すために何ができるのでしょうか。

この記事を読んで、「プラスチックの問題や海の環境」について知識が深まった方々には、自分のしていることが環境にどのような影響を与えるのかをよく考えて行動するようになっていただければ幸いです。

また、そのような行動ができるようになった人が1人でも増えることで、社会全体の環境問題に対する認識・動きが変わって欲しいと願っております。

今後も様々な情報を発信していきますのでぜひ参考にしてください。

(学生推進員 松村ゆみ)

【参考サイト・文献】
・増え続ける海洋ごみ 今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちに何ができる?/日本財団ジャーナル
・SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」で解決するべき問題と現状とは/gooddoマガジン
・学術誌「Geochemical Perspectives」
・舟木賢徳 著 『「レジ袋」の環境経済政策: ヨーロッパや韓国、日本のレジ袋削減の試み』P.136
・病気の温床、洪水の原因? 発展途上国で進むレジ袋禁止/朝日新聞デジタル
・欧州委、使い捨てプラスチック製品の流通禁止を前に指針発表/JETRO
・中国政府、プラスチック製品禁止発表。2025年までにEU並の規制。日本は中国に先越される/Sustainable Japan
・プラスチックを取り巻く国内外の状況/環境省

この記事を書いた人

ECCCA

愛媛県地球温暖化防止活動推進センター 愛媛県における温暖化防止活動をサポートし、実践活動、情報提供やコーディネートを行っています。

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