100円で始めるサステナブル(2) ニワトリを買うのが投資のはじまり
サステナブルとお金、今回のテーマは、「株式投資」です。
(第一回目のコラム「100円で始めるサステナブル(1) モノを買うあなたの「つかう責任」」はこちらから)
ニワトリを買うのが「投資」、卵を買うのが「消費」
『卵を買うならニワトリを買いなさい』
これは、私が結婚したとき、夫の母に教わった言葉です。
当時20歳の私は投資ビギナーで、義母は投資の先輩でもありました。
これは「投資」がくれるメリットについて触れた言葉です。
卵は買って食べたらすぐ無くなってしまうけれど、ニワトリは何度も卵を産んでくれる。
例えば、外食チェーン店の株を買うと、お店で使える金券がもらえたりします。利益を株主に配る「配当金」が定期的に貰える株もあります。
商品(卵)を買うと、消費してしまえばそれきり。でも企業の株(ニワトリ)を持っている間は、優待や配当といった「卵」を繰り返し受け取れます。
『卵が食べたいなと思ったら、少し我慢したらいい。そのお金を少しずつやりくりして、ニワトリを買えばいいのよ。』
これが義母から教わったことでした。
実際に「ニワトリを買って」みた
これを聞いた私も、実際に「ニワトリを買って」みることにしました。
ネット証券で口座を作り、3万円で購入したのは、よくスーツを買いに行く紳士服チェーンの株です。
株を持っている人には、スーツの割引券が届きます。
シーズンごとに割引料金で服を買っていると、投資した3万円以上に割引を受けられることもあります。それに加えて、6カ月ごとに約1000円の配当金を受け取っています。
投資した3万円は手元から消えてなくなったわけではありません。出資をした証明、「株式」として手元に残ります。
企業の株が2万円に値下がりしたときに手放せば「1万円マイナス」になるし、4万円に値上がりした時に手放せば「1万円プラス」ということです。値下がりで損をしても、今までに受け取った「卵」の価値はゼロにはなりません。
「ニワトリを買う」はお金持ちの理論?
とはいえここで、1つの疑問が浮かび上がりました。
「これって…ニワトリを買えるだけの元手がある人、お金持ちの理論じゃないの?」ということです。
卵は1個20円。ニワトリは1羽2,000円。
スーツの割引は1着3,000円。スーツ屋さんの株は3万円。
投資を始めるには、いったいいくらのお金が必要なのでしょうか。
100円からも投資は始められる
本物のニワトリを買う(飼う)ためには場所を整備したり、エサをやったり…コストも手間もかかります。でも株を持ちつづけるのに、場所代やエサ代は要りません。ニワトリのように寿命が短くもありません。
企業の個別の株を買うほかにも、色々な投資商品があります。例えば、様々な企業の株を集めて、小額から購入できるように“小分け”された「株式投資信託」です。
投資信託は1,000円から、中には100円から購入できるものもあります。
投資を始めるのに必要なのは、「たくさんの軍資金」ではありませんでした。
ハードルがあるとすれば、お金ではなく、「やっていないことをやってみる」という気持ちのハードルなのかもしれません。
投資はサステナブルなしに語れない
では、様々な企業があるなか、何を基準に投資先を選べばよいでしょうか。利益率?借金の少なさ?成長のスピード?
選ぶ基準は「サステナブルかどうか」と言い切ってよいと個人的には思います。
自分がお金を出して応援している企業には、もちろん倒産しないで欲しい。
効率よく、たくさんの収益を上げてもらいたい。
でも…そのために水や森林を汚染したり、人権を無視して長時間労働をさせたりして、企業活動が長く続けられると思いますか?どこかでつまずいて、立ち行かなくなる未来が想像つきますよね。
つまり、判断基準は「で、その事業って持続可能なの?」という一言です。収益を上げることは大切。でも、それを続けていけるような、持続可能な仕組みになっていなきゃいけない。
こうした持続可能性は、企業のためでもあり、投資する人のためでもあります。企業と一緒に地域で生きる、私たち一人ひとりのためでもあります。
こうした持続可能性をはかる一つの指標として、「ESG投資」という言葉もあります。
ESG投資
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉です。(ESG金融/環境省HPより)
「環境」とは、地球温暖化対策や、水資源の保護など、地球環境の保持のための取り組みです。
「社会」とは、製品の安全性、ワークライフバランスや、人権に対するもの。
「ガバナンス」とは、リスク管理や法令順守、企業倫理など。
こうして並べてみると、持続可能な開発目標として挙げられた、SDGsの各ゴールと重なっていますね。ESG投資とは、これらに配慮して活動する企業へ投資することです。
企業がESGに取り組むことは、社会的責任を果たすため、企業価値向上やイメージアップの他にも、経営のリスクを取り除くことにも繋がります。
ESGに着目した企業をラインナップにした投資信託もあり、100円からの購入もできます。
「応援したい」も投資理由
「この企業、成長しそう」「安定してそう」という理由だけが、企業に投資する理由ではありません。
株式投資では、優待、配当、値上がり益など「自分の利益」を増やすことができます。
でも、株を買うという行動はそもそもは「応援したい企業に出資する」ことです。
この企業の事業に賛同する、この企業を応援したい、という意思表示なんですね。
前回お話した「モノを買うことに想像力を持つ」という話とも繋がります。
お金を使うことは決してネガティブなことではないし、そのお金の使い道をよく考える・想像することが、自分の「ありたい世の中」を応援する一歩になります。
「この商品は、どんな企業が作っているんだろう?」「このお店の経営者は、どんな想いを持っているんだろう?」「どんな世の中を目指す企業なんだろう?」
モノを買う、から一歩進んで、「自分の出資するお金で」作り手を応援できるのが投資です。
お金に活躍してもらおう!
企業が販売するモノを購入・消費すること以外にも、投資という方法で、自分の持っているお金に活躍してもらうことができます。
持続可能な企業の取り組みに対して、お金を出資して応援する。100円からでもできるサステナブルとして(もちろん、自分の資産形成の方法の一つとして)やってみてはいかがでしょうか。
※注意!株式投資は自己責任
株式投資にはリスクもあります。事業がうまくいかなかったり、不祥事が起きたりして、持っている株式の価格が下がってしまうことがあります。企業が倒産すれば、100万円の株が0円の価値になってしまうことも。ですから、生活に必要なお金をとにかく投資にと回すのは厳禁。そうしたリスクについて自分で調べて、余裕のあるお金で始めることが鉄則です。