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COLUMN&INTERVIEW

ゼロ・ウエイストで循環型地域の開発を

はじめに

ゼロ・ウエイストを知っていますか?ゼロ・ウエイスト(zero waste)とは、無駄・ごみ・浪費をなくし、廃棄物自体を減らしていこうという考え方のことです。近年ゼロ・ウエイストの考えが浸透しており、実践している企業や活動家が増えているようです。

ではなぜ今、ゼロ・ウエイストが注目されているのか?そもそもゼロ・ウエイストは何なのか?循環型社会は本当に実現できるのか?今回のコラムではこれらのことについて紐解いていきたいと思います。

ゼロ・ウエイストの定義

ゼロ・ウエイスト(zero waste)とは、出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方です。

徳島県上勝町では、2002年に自治体として日本では初めて『ゼロ・ウエイスト(廃棄物ゼロ)宣言』を行いました。内容は、2020年までに、上勝町で焼却するごみをゼロにするというものです。最も特徴的な施策は、ごみの45分別(ごみを45種に分別することを指します)。町民自らがごみ収集所のごみを運び廃棄以外の手段を選ぶ努力をしています。

結果としては、2020年のリサイクル率は80%となり、100%には至らなかったものの日本のリサイクル率(19%)と比較するとかなり高い割合でリサイクルを実現していました。その後上勝町以外の地域でもゼロ・ウエイスト宣言を提唱したり、循環型社会を実現しようとしたりする動きが見られています。

なぜ、今ゼロ・ウエイストが注目されているのか?

さて、なぜ今ゼロ・ウエイストが注目されているのでしょうか?まず、現在の消費後行動についてみていきましょう。ごみは、大きく分けると「埋める」「燃やす」「リサイクル」の3つの方法で処理されています。それぞれの方法の特徴についてみていきましょう。

[埋める]

ごみは焼却された後、有害物質が漏れないよう厳重に管理された最終処分場で埋められます。現在の課題は最終処分場に埋められる許容量に限界がきていることです。

[燃やす]

そもそも、ごみを処理する際には焼却施設で焼却する必要があります。ここではまだ使えるはずのものも焼却されている可能性が高いです。また、燃やすためには多くの資源と大きなエネルギーが必要となります。CO₂排出にもつながります。衛生的に処理する手段として重要な役割を担っていますが、本当にこのままで大丈夫なのでしょうか?

[リサイクル]

リサイクルは焼却・埋め立てごみを減らすために画期的な手段と言えます。リサイクルだけではなく、リユース、リメイク、リデュースなどを合わせて3R、4Rという考え方も用いられており、近年はエコアクションに積極的に動いている人も増えてきています。

このように良い傾向が見られる一方で、リサイクルには実はコストやエネルギーがかかりすぎるという問題があります。リサイクル工場まで運ぶ費用やエネルギー、ペットボトルなど汚れた材料をきれいにするためのエネルギーが実はデメリットと、とらえる見方もあります。あとでリサイクルするから大量に生産、消費しても大丈夫!という訳にもいかないようです。

また、今の社会で実践されているリサイクルは本当にリサイクルできているのでしょうか?ここで、サーマルリサイクルの例を考えてみましょう。

●サーマルリサイクルとは?

サーマルリサイクルとは、廃棄物を焼却処理した際に発生する排熱を回収し、エネルギーとして利用することです。例えば、地域の発電や、ボイラー、温水プールなどに使われているようです。焼却に主に用いられるのは、焼却時の発熱量が石油と同程度に高いプラスチック類の廃棄物です。一般社団法人プラスチック循環利用境界が収集した2005-2019年のデータによると、日本はプラスチックのリサイクル率を2019年時点で85%としていますが、そのうち、60%はこのサーマルリサイクルが占めています。

●サーマルリサイクルのメリット

サーマルリサイクルのメリットの一つは、現在の技術で再資源化が困難なもの、分別の工程が煩雑で再資源化に非常に大きなコストがかかってしまう廃棄物などを有効活用できる点です。また、火力発電に必要な天然資源を一定量節約することが出来ます。

●サーマルリサイクルのデメリット

一方、サーマルリサイクルのデメリットの一つはプラスチック類を焼却すると発がん性のあるダイオキシン類が発生することです。また、廃棄物を燃料として使うといってもその際に燃やすのでそこで二酸化炭素を排出してしまいます。本当に地球にやさしいのか?という疑問が残る点です。

ちなみに、海外では、「エネルギー回収」や「熱回収」と呼び、リサイクルとは離したものとして考えられています。

これに対し、日本では政府の定める「循環型社会形成推進基本法」にて、廃棄物・リサイクル対策の優先順位を、①リデュース②リユース③マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル④サーマルリサイクル(熱回収)と定めており、サーマルリサイクルはあくまでもリデュースやリユースが出来なかった場合の廃棄物活用法と位置付けられています。

以上のように、消費行動の後に変化を加えるだけでは足りない、間に合わない!という風潮が出てきているため、ゼロ・ウエイストを実行し、ごみの出ない循環型社会の実現が注目されるようになったのです。

市民の理解が第一に必要。循環型社会を実現した街!上勝町

元々上勝町では、新しくごみを燃やす諸客路を立てる財源的な余裕がなかったため、ごみそのものを減らす仕組みやごみを焼却しない方法を模索していました。それが結果的に『上勝町ゼロ・ウェイスト宣言』のきっかけとなりました。80%のリサイクル率を2020年に示したことで、ある程度循環型社会、地域循環が可能であることを証明しましたが、「町民の力だけでは実現しえない」と結論付けています。

はじめは反対する市民も一定数いたため事業を始めていくにあたり、継続的に地域のためになる行いをしていったことでが、信頼や理解を得ることに繋がったとのこと。完璧な循環型社会を実現するためには消費者、事業者、行政の連携が必要であるようです。

(図:循環型社会の理想図:上勝町役場企画環境課資料を参考に作成)

実際に上勝町に視察に行ってきた学生推進員に話を聞いてみました。

〈印象に残った活動、場所〉

「『一般社団法人 ひだまり』を訪問しました。ここでは使わなくなった鯉のぼりなど用いて、服やバックなどのさまざまな製品を制作し販売しています。上勝町は鯉のぼりが有名な地域であり、廃棄予定の鯉のぼりをその柄を残したまま新たな製品として作り替えることが、上勝町の特性を良く、また合理的に活かしている産業だと感じ印象に強く残りました。」

〈上勝町の具体的な取り組みについて〉

「分別してくれた住民に対し、地元の小売店などで使えるポイントを配布しています。加えてごみ収集の車を走らせゴミステーションから離れた場所に住んでいる住民も参加しやすい体制をとっていると感じました。」

(ごみステーション:徳島県上勝町)

〈愛媛県で実現するには?〉

「形は地域にもよりますが、人口の少ない小さな町で住民の理解を得て、住民主体で行っていくことが大切ではないかと思いました。また、大きな町では、もちろん住民の主体性も必要ですが、行政や事業所などがまず始めていくことが良いと思いました。」

「愛媛県のニュータウンをモデルタウンとして上勝町の取組を真似することから初めてはどうでしょうか。」

(無料のリユースショップ「くるくるショップ」:徳島県上勝町)

私たち学生推進員にできること

私が学生の頃から国語や社会、理科などの教科書で環境問題に関わる資料を見てきました。また、地域の清掃活動の際に、海の周辺が散乱したごみで汚くなってしまっている様子もしばしば見てきました。でも、悲観的にはなりませんでした。ごみが捨てられていれば拾えばよいし、そもそも不要なものまでは購入せず、消費行動の時点で資源を大切に使えばよいと思いました。

ただ、一人だけではできることが限られているので、やはりこの考えが多くの人に浸透し、地域全体で意識がまとまる必要があると思いました。

自分の部屋の片づけをし終わったあとや、洗濯物をきれいにたたんでしまい終わったあとってすっきりしませんか?私はいつも掃除の後は思考も整理され、新しいことへの意欲もわいてくる気がするのでこの時間が好きです。

地域も、地球も一緒だと思います。規模が大きいだけでみんなが住む部屋(地域)と考えればよいのではないでしょうか?長く快適に生活していく、そのために環境活動を生活に取り入れていくのが理想の形だと私は思っています。このような考え、行動の仕方が浸透すれば、循環型社会が実現し、今以上に人も自然も生き生きした社会になると私は思っています。

このような社会を実現するために私たち学生推進員にできることとして、まず一つめに、「循環型社会」について何をするか、情報がいきわたるように私たち一人一人が草の根活動として、認知度を高めていくことが大切だと思います。学生推進員である私たちも循環型社会について実践的な知識を身に着けているわけではありません。まず私たちが実践的な知識を身に着け、多くの人に普及していく活動が必要になると考えます。

上勝町を視察した学生推進員からは、「労力のかかる作業に承諾してくれる人はまず少ないと思うので、行動のハードルを下げるために条例でごみの分別する種類を増やすことやごみ袋有料などから始め、住民の意識改善などを図ることが優先だと考える」という意見もありました。

私たち学生推進員は定期的に環境講座を開いて自分たちの知識を更新し、地域の人と交流できる一般向けイベントでそれらを共有しています。また、市の役員や地域の企業の経営者の方、農家の方との交流・意見交換を通じて、机上の空論ではなく、今、現場で何が必要とされているのかを考えています。このような実践的な活動を継続していきたいと思います。

特に対面での講座やイベントを定期的に開催し、循環型社会の重要性に注目してくれる人を一人でも増やすことが出来る絶好のチャンスだと感じてきました。環境フェアへの出展やショッピングモールなど地域の方が集まりやすい場所で会場を借りたイベント、小学生向けの講座など、地道な地域でのイベントを積み重ね、市民の理解を得るきっかけとなるように継続する必要があると感じました。また、例えば普及・発信方法としてはSNSなどの活用も継続していきたいと考えています。さらにこのコラムも活用し、定期的に更新することが次への一歩につながると考えています。

これらを通して、地域の人の生活に寄り添った環境活動、企業の取り組みと私たちが協力できること、行政が目指している環境に優しい地域の在り方を共に考えさせてもらい、それぞれの役割の橋渡しの一助が出来れば良いなと思います。
(学生推進員 八木新葉)

【参考文献】
ゼロ・ウェイストとは? | ZERO WASTE TOWN Kamikatsu (zwtk.jp)
「2020年廃棄物ゼロ宣言」の町、結果はどうなった?45種の分別、ゴミ収集車なしの挑戦、その後…。 | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)
【ゼロ・ウェイスト】 ごみやムダのない社会を目指す“容器返却“や”ラベルレス“の取り組み事例 | SDGs/エシカル|ノベルティ・オリジナルグッズの紹介やトレンド情報を発信中|株式会社トランス(東京・大阪) (trans.co.jp)
サーマルリサイクルとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
サーマルリサイクルとは?メリットや問題点をわかりやすく解説|EGR (egmkt.co.jp)
煙をふく工場の写真素材 – ぱくたそ (pakutaso.com)

この記事を書いた人

愛媛県学生地球温暖化防止活動推進員

愛媛県地球温暖化防止活動推進センターより委嘱を受けて活動しています。

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