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COLUMN&INTERVIEW

ハカセと学ぶ気候変動と自分たちのつながり 第三回:これから地球はどうなるのか?

前回までに、今、どれほど地球がおかしいのか?ということについて見てきました。今回は未来のお話です。
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このまま温暖化が進むとどうなるの?ということについては、さまざまな予測があります。

今世紀末ころまでの予測として、

  1. 「100年に一度」クラスの高潮が「毎年」起こるようになる(2019年のIPCC報告書の要約版の日本語訳
  2. 「50年に一度のすごく暑い日」が、毎年のように発生する(2021年のIPCC報告書の要約版の日本語訳
  3. 大雨と乾燥の程度がより強く、頻繁に起こるようになる。雨がすごく増えるところと、すごく減るところがある(2021年のIPCC報告書の要約版の日本語訳)。
  4. 水産業、農業など、今まで通りの食生活が成り立たなくなる

など、極端な現象の頻度や強度が上がっていくことが予想されています。それぞれ少し詳しく見てゆきましょう。

  1. 海面水位の上昇について。
    温暖化によってグリーンランドや南極の氷がどんどん溶けて海に流れ流れ込んでいます。それによって海水が増え、じわじわと海水面が上昇しています。現在は年間3mmほどで上昇していますが、これは1960年代までの上昇速度の3倍で、変化のスピードがどんどん早くなっています。2100年頃までに1mほどの上昇は十分あり得て、最悪2mほどになる可能性もなくはないとの予測もあります。高潮は台風と満潮が重なった時などにも起こるので、それくらいの浸水は2100年を待たずして頻発してしまうわけです。
    今すぐに温室効果ガスの排出を止めたところで、海面水位の上昇は数百年~数千年にわたって続きます。世界中の大都市は沿岸にありますので、高潮対策や町ごとの引っ越しなども視野に入れて考え始めなくてはいけません。


(Aline DasselによるPixabayからの画像)

  1. 暑い日の頻発について。
    既にみなさんが感じていらっしゃると思いますが、少し前より暑い日が増えているし、暑い期間も長くなっています。IPCCの報告書に書いてあるのは、例えば「10年に一度の暑い日」の回数と温度差です。最近の「10年に一度の暑い日」は、1850 – 1900年までの「10年に一度の暑い日」に比べて1.2度ほど暑くなっているそう。そして頻度は約2倍。例えば 1850 – 1900年では最高気温が34度まで上がる日が10年に一回くらいだったのに、今は35.2度まで上がる日が5年に1回ある、ということになっています。なんとなく実感できますね。
    この傾向は、温暖化が進めば進むほどより極端になります。このまま対策が行われずに温暖化が進んだ場合は、2100年には 5.1度高く、頻度が約9倍に。最高気温39.1度まで上がる夏が、10年のうち9年はあるということに。もちろん、38度、37度といった酷暑の日も増えます。ちょっと想像したくない世界です。
    (Gerd AltmannによるPixabayからの画像)
  2. 大雨や乾燥に関して。
    暑い日の頻度と強度が上がる、という話を上に書きましたが、傾向としては同じです。地域によって、大雨がますます増えて激しくなったり、乾燥の傾向がますます強くなったり、ということが起こってくることが予測されています。(David MarkによるPixabayからの画像)
  3. 少し切り口や解像度の違う話としては、寿司が食べられなくなる、ということも考えられています(ユーグレナのサイト)。降水量の変化、塩分の低下、海洋の酸性化などさまざまな原因によって魚介類が減少してゆく、という予測です。わかりやすいビジュアルがあるので、ぜひ見てみてください。
    (https://www.euglena.jp/sushi/ より)
  4. 農水省の「水産白書」にも、2100年頃の予測はありませんが、1980年代から比べて既に漁場の変化が起こり始めている現状が報告されています。2100年には一体どれほどの変化がでてくるのでしょうか。
  5. 農水省の地球温暖化影響調査レポートにも、既に出ている日本の農業への影響が記されています。稲、ぶどう、みかん、トマト、家畜など、既に温暖化の影響で不作が多数報告されています。将来的には現在の品種の栽培に適した地域が北へとシフトしてゆくので、作物や品種を変えることや、移転を考える必要性も出てきます。実際にいくつかの酒蔵が北海道に移転していることもニュースになっています。

このように、将来の私たちの食の安全はもちろん、生活の質に直接影響してくることが多数起こってくることが予想されています。少なくとも、温暖化が進んでより良くなる、という未来はあまり描かれていません。不安定になる要素が大きいので、なるべく変化を抑える方向にできることをやっていくことが必須となってきます。

上を読んで、80年も先のことを話しても、、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし実は、今がいちばん重要な時期と言っても過言ではないくらい、事態は差し迫っています。

このまま対策をしないと、上に書いたような暮らしにくい地球に変化してゆきますが、そこまで行ってしまうともう数千年〜万年はもとの暮らしやすい地球に戻らなくなってしまう、ということがわかっています。でも、今ならまだ戻れます。

その戻れるか、戻れないかの分岐点は一体どこなのか?

それが、「産業革命前から比べて 2.0度のあたり」にある可能性があると考えられています。これも不確実性の大きな推測であり、1.9度や1.8度、もっとずっと低い数値かもしれません。予防原則として、それより十分低い 1.5度以下に抑えるというのが賢明です。

現在の温暖化の幅は、1.07度。このままの排出が続くと、9年後にそのレベルを超える(NHK)と報道されています。

(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221112/k10013889371000.html より)

私たちのこの10年が、この先数万年の地球の姿を決める重要な時代を、私たちは生きています。そんな時代に暮らす私たちは、今何をすればいいのでしょうか?

そのことについて、次回見てゆきます。

この記事を書いた人

大岩根 尚(おおいわね・ひさし)

1982年宮崎市生まれ、環境活動家。株式会社 musuhi 取締役。 2010年に東京大学で環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、53次南極観測隊として南極内陸の調査隊に参加。帰国後は研究者を辞め、鹿児島県三島村役場のジオパーク専門職員として働く。2015年に認定獲得した後、役場職員を辞めて同村の硫黄島に移住、起業。硫黄島での自然体験、研究、SDGs 関連のサポートなど幅広く活動中。特に、気候変動対策としては書籍 Drawdown や Regeneration の翻訳協力、鹿児島県大崎町のサーキュラーヴィレッジラボ所長、個人レベルのアクションを創出する講座の開催など、さまざまなレベルでの活動を展開している。

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