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CARBON NEUTRAL

【第2回】環境ビジョンを掲げ、2050年までのCO2排出量「実質ゼロ」を目指す/株式会社LIXIL

2022年10月に環境省が始動させた「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」。2050年のカーボンニュートラル、そして2030年度の温室効果ガス削減目標達成に向けて、国民の行動変容やライフスタイルの変革を後押しするためにスタートしたもので、実現に向けた個別アクション「第一弾」として、「デジタルワーク」「住まい」「ファッション」が提案されました。

今回は、この連載の第二回として「住まい」を取り上げます。社を挙げてカーボンニュートラルに取り組む株式会社LIXILより、LIXIL Housing Technology 営業本部四国支社 LHT愛媛営業所長の木村寿彦さんに、お話をお聞きしました。同社の環境ビジョン、具体的な取り組み、脱炭素と住まいの関係など、詳しくご紹介します。

会社紹介

株式会社LIXIL
2011年、国内の主要な建材・設備機器メーカー5社(トステム、INAX、新日経、サンウェーブ工業、東洋エクステリア)が統合し誕生した企業。「ウォーターテクノロジー」「ハウジングテクノロジー」の2つの事業を持つ。環境ビジョン「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までに事業プロセスおよび製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロにすることを目標に、さまざまな取り組みを進めている。

環境省「2030年までに、家庭部門で温室効果ガス66%削減」住まいと脱炭素の関係

−最初に、貴社について教えてください。

木村寿彦さん(以下、木村): 株式会社LIXILは、パーパス(存在意義)を「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」としています。この目的を達成するため、主に2つの事業を展開しています。一つは、お風呂・トイレ・キッチンなどの水回り製品を扱う「ウォーターテクノロジー事業」。そしてもう一つは、窓や玄関ドア・エクステリア製品・インテリア建材などを取り扱う「ハウジングテクノロジー事業」です。

LHT愛媛営業所 所長 木村寿彦さん

−2022年10月に環境省は「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」を始動しました。この実現に向けた個別アクションの第一弾として「住まい」が挙げられています。なぜ「住まい」なのでしょう?

木村:2021年、政府は2030年度の温室効果ガス排出量を、2013年比で「46%」削減する目標を掲げました。その実現に向けて、産業、業務、家庭、運輸、エネルギー転換でそれぞれ部門別に削減率が発表されましたが、家庭部門は最も高い「66%」でした。各家庭で言えば、年間2,436kgを削減する必要がある、という計算になります。

特に住宅の断熱による省エネルギー化は重視されており、今回の国民運動でも「快適で健康な暮らしにもつながる住宅の断熱リフォームキャンペーン」の展開が発表されています。それだけ、脱炭素と住まいは関連が深いものであると言えますね。
【出典】脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの10年後/環境省

−カーボンニュートラル実現のために、家庭での温室効果ガス削減は急務なんですね。

木村:実は、全国の住宅の約9割が、現行の「省エネ基準」を満たしていないと言われています。その数、約1,770万戸。それらの家の窓の断熱化を進めることが、LIXILの役割だと思っています。

極端な話ですが、日本のすべての既存住宅の窓をトリプルガラスにリフォームしたとすると、年間1,509万tのCO2削減量となり、自動車の燃費改善によるCO2削減効果の約6割にもなります。大き過ぎて分かりづらい数字ではありますが、窓リフォームを進めることで、多くのCO2削減に繋がるということは間違いありません。

「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの10年後」の絵姿
【出典】脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動/環境省

環境ビジョンの達成に向け、CO2排出量削減目標を刷新 サプライチェーン全体で取り組む

−貴社では、脱炭素に関する目標も掲げていらっしゃいますね。

木村:はい。当社は環境ビジョン「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げており、2050年までに事業プロセスおよび製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。直近では、2022年6月にCO2排出量削減目標を刷新しました。「自社で使用した燃料および電気に伴う、温室効果ガス排出」によるCO2排出量を、2019年3月期比で半減させること。そして、「サプライチェーン※上での温室効果ガス排出」を3割減させる、という高い目標を設定しました。
※サプライチェーン:製品の原材料の仕入れから販売、消費に至るまでの、一連の流れのこと(調達・製造・配送・販売・消費など)
【参考】脱炭素化の実現に向けて、CO2排出量削減の新たな中間目標を設定/LIXIL

−具体的な取り組みについて、教えてください。

木村:2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、当社ではサプライチェーン全体で取り組んでいます。取り組みには、大きく2つの方向性があります。

1つ目は、「オペレーショナル・カーボン」です。これは、居住時(建物利用時)のエネルギー使用によるCO2排出量のこと。これを削減するため、2026年3月期までに、商品ラインナップの高性能窓比率を100%にする目標を掲げました。これまでの一般的な窓は一枚ガラスのものが多かったのですが、層が多いほど断熱性は高くなります。当社では、その性能が高いものに順次切り替えていくという方針です。

高性能窓のサンプル(LIXILショールーム松山)

2つ目は、建設にかかる原材料の調達から、加工・輸送・建設・改修・廃棄に至るまでのCO2排出量「エンボディード・カーボン」です。この削減のために、当社では原材料として市中アルミ(当社以外で使用・回収されたアルミ)資材の再生利用を進めるなど、アルミリサイクルを柱としたCO2排出量削減を進めています。

窓のリフォームコーナー(LIXILショールーム松山)

また、当社では「リフォームポイントプログラム」という取り組みも進めています。これは、お客様がLIXIL製品を購入いただいた際、それがどのくらいCO2削減貢献に繋がったのかを「見える化」する仕組み。製品ごとにポイント数が設定されており、専用アプリで製品に付いたQRコードを読み取ると、ポイントが貯まっていきます。

貯まったポイントと連動して、現在のCO2削減貢献量の数値だけでなく「杉の木○本分のCO2が削減できました」など、貢献度が分かりやすく表示されます。

これはLIXIL社内だけでなく、県内の環境意識の高いリフォーム業者さんにも導入されています。その会社では、社員の方々がそれぞれCO2削減の数値目標を掲げ「目標達成のために、これだけの窓開口部のリフォームを実施しよう」とモチベーションを高めているそうです。

このプログラムに賛同いただける協力会社さんをもっと増やしていくことも、私たちにできることの一つだろうと考えています。

リフォームポイントプログラムのアプリ画面

協力会社と共に「住まいの断熱性能」の大切さを訴える 小学校への出前授業も

木村:当社は「住まいの断熱性能を上げることが、カーボンニュートラルに繋がる」ということを発信し続けており、実際に取り組みも進めています。ただ、いちメーカーが言っているだけでは、力不足な部分もあります。だから、工務店さんなど多くの協力会社さんにもその必要性を訴え「一般社団法人 住宅開口部グリーン化推進協議会」という団体を立ち上げました。「窓のリフォームによって、これだけ住まいのCO2が削減できる」ということを国の評議会などでしっかりとアピールしています。
【参考】一般社団法人住宅開口部グリーン化推進協議会

そして、11月には「高断熱窓などの設置」だけで1,000億円という補助金が閣議決定されました。これにより、多くの住宅が断熱性能の高い窓に切り替わるでしょう。CO2排出量の大きな削減に繋がると期待しています!

−最後に、今後のビジョンについて教えてください。

木村:私たちには、「人と地球に優しい温度」についてもっと多くの方々に考えていただきたいという想いがあります。当社では、それを「THINK HEAT」と位置付け、さまざまな活動を行っています。

LIXIL出前授業「健康と環境によい住まい方」

愛媛営業所でも、現在小学生向けの出前授業を検討しているところです。実際に、同じ四国エリアの営業所では実施されています。

具体的に言うと、小学校高学年の授業において、一般的な窓ガラスと断熱性能の高い窓ガラスで熱の伝わり方がどう違うのか…などを、実践を交えてお伝えします。子どもたちが知識をつけることによって、ご家族で自宅の温度や断熱性能について考えるきっかけになるかも知れません。

当社のパーパス(存在意義)は「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」です。今後も、この目標を実現するため、当社だけでなく多くの人を巻き込みながら、皆で2050年のカーボンニュートラルを目指していきたいと考えています。

編集後記

昨年発表された「温室効果ガス46%削減」という数字については、認識していました。でも、今回の取材でその目標達成のために「家庭」に最も大きな期待がかかっていること。そして各家庭で2,436kgの温室効果ガスを減らす必要があることを知りました。日々の生活に追われていると、環境という大きなテーマについては、「誰かがやってくれる」と、どこか他人事のように捉えてしまいます。しかし、今やらなければ、困るのは子どもや孫たちの世代。大切な彼らの暮らしが脅かされることの無いよう、今私たちが「自分ごと」として考え、取り組んでいかなければならないと思いました。

三神 早耶(みかみ・さや)

愛媛県松山市在住。大学卒業後、広告代理店の営業や進行管理などを経て、2016年からフリーライターに。ビジネスメディアや、地元経済誌、企業のWebサイト等において、取材や記事の執筆をしています。私生活では2児の母。趣味はキャンプと仕事。

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