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COLUMN&INTERVIEW

SDGsの“一隅を照らす” ~農業分野の座談会~

「一隅を照らす、これ則ち国宝なり」

これは、平安時代に天台宗を開いた最澄の言葉で、みんなが気づけていないほんの片隅、一角にもちゃんと目を向けて物事に取り組む人こそ尊い人だという意味がある。

故中村哲医師の信念として一躍有名になった言葉で、世界中すべての困難に一人が取り組むのは難しいことだが、自分ができる範囲のこととしてアフガニスタンの農業振興のために灌漑事業を行おう、と解釈して使っていた。

私自身、農家見習いとして農業に関わっているため、ECCCA WEB MAGAZINEのライターとして、私は農業分野に照点を当てて書くことが多い。これはまさに、“一隅を照らす”という観点からだ。

2020年9月28日(月)に愛媛県地球温暖化防止活動推進センター(松山市辻町)にて行われた愛媛県地球温暖化防止活動推進員と農業経営者による座談会に参加した。(主催:愛媛県地球温暖化防止活動推進員 中村 禎司氏)

農家の「やりがい」や「土地を荒らしたくない」という思いで賄っているのが現実であると思っている私は、この座談会で、他の農業関係者の現状やこれからの展望、また、農家以外の一般の人が農業に対して感じていることなどを知りたい・聞きたいという想いで参加してきた。

人手不足問題

【家族での農業の様子(戸田果樹園、西条市)】

瀬戸内の農家の農閑期は、雪が降る地域とは意味合いが違い、家族だけでできる時期が農閑期で、家族以外の人も雇わないと人手が足らない時期が農繁期だ。したがって、季節労働者を雇うパターンが多い。しかし、仕事をバリバリこなせる人はもうすでに定職についているか、他の農家さんに雇われていることが多いのが現実で、働きにやってくる労働者と雇い手にミスマッチが起こることが多い。

そこで、農業用のマッチングアプリのようなものがあればアルバイト探しに生かせるのではという意見がでた。農業用ではないが、スキマバイトアプリ「タイミー(Timee)」というアプリは、登録者を第三者が評価しているため、雇い手と働き手のミスマッチを防ぐのに有効だ。

【家族での農業の様子(興居島)】

また、外国人実習生を雇うのはどうかとの意見もでた。仲介料をたくさん支払ってやってくる外国人労働者には正当な対価が支払われていない現実があるため、実習生にとっても働きやすい安心できる環境への見直しも必要かもしれない。

規格外の農産物

【戸田果樹園での子ども食堂への提供(西条市)】

市場で値が付かない、いわゆる“規格外”のものにどうやって付加価値をつけていくか。農家は自然が相手なので、どんなにがんばって作っても規格外の品物はできてしまう。

子ども食堂への無償提供や子どもの収穫体験を活用した事例がでた。しかし、広報活動や社会的貢献などの面でPRはできているが、今現在、農家へのキャッシュバックはほぼないため、今後は農家の方にもお金で返ってくるようなシステム作りが必要であるという意見があった。

オーナー制度

【幻のいもと呼ばれる七福芋(新居浜市大島)】

農業経営の一つとして、オーナー制度というものがある。愛媛県では、あらかじめ申し込みを行い、生育状況をWEBで見たり収穫体験をしたりすることなどによって生産過程を楽しみ、農林水産物を受け取ることができる取り組みとしている。

周防大島ではみかんの木、愛媛県では新居浜にある大島では白いもがこのオーナー制度によって管理されている。都会の人が農業を身近に感じることができるというメリットがある一方で、年によって天気も違うから、毎年出来が違うというデメリットもある。

【西日本豪雨被害(興居島)】

オーナー制度をより活用していく方法として、ZOOMなどを活用し、日々の作業をもっとこまめに動画で配信し、経費の面でも隠さず見せることによって農家の現状を分かってもらうことが大切なのではないか、という意見があった。

愛媛県庁/オーナー制度とは?

有機栽培

【いけちゃん農園のニンジン(新居浜市)】

今回参加していた農業関係者の主な作物はみかんとぶどう。農薬を使わないと栽培が難しいと感じている方ばかりだったが、有機農業で成功している方のお話も聞くことができた。

株式会社いけちゃん農園(新居浜市船木)の有機栽培ニンジン「うまっ!キャロッ!」は、収穫後、耕し、ビニールシートを張って草の種を焼き、シートを外して土の成分を分析し、不足している成分を追加で有機物を施している。正品率も慣行農業よりも良く、栄養価も日本一を獲得している。

また、有機農業の勉強会も定期的に開催している。他の農家との差別化を図るためなのももちろんだが、安心して子どもたちにも食べさせてあげることができるから有機栽培を選択していたり、知識や経験を惜しみなく未経験者にも教えたりと、次世代への強い思いを実践して農業に取り組んでいる。

株式会社いけちゃん農園 | 高抗酸化力の有機栽培人参「うまっキャロッ」でジュースクレンズ 

Organic Festa Records by Japan Organic Farming Association: オーガニックエコフェスタ2020栄養価コンテスト受賞者紹介

学校給食に有機農産物

農水省は、有機農産物を学校給食に導入するための支援を始めた。販路の確保が狙いである。

農家自身、農薬を使わないのが理想なので、この仕組みはとても画期的だ。

農協に入ると直販できる量はほんのわずかに限られるルールがあるため、農家は、農協に入ってほとんど全部市場で売るか、全て直販で売り切るかの二択しかないのが現状だ。

直販で売るのは自分が売りたい持続可能な経営に必要な価格をつけられるのがメリットだが、全てを直販で売るにはある程度の知名度が必要で、情報があふれる昨今においては難しい。

市場で売るためには、日本では見た目の基準がまず大前提にあり、有機で作る農作物はたいていの場合はその点で不利である。

この取り組みの疑問点としては、まず、給食は貧困層の子どもが栄養をとれる貴重な機会なのに、給食費が高くなってはしまわないか。そして、有機で作られる品種は限られているので、子どもたちがバラエティ豊かな味を体験するチャンスが減ってしまうのではないか、という点だ。(参考資料:「無農薬栽培は可能か?」)

日本農業新聞 – 学給に有機農産物 農業の未来開く端緒に

座談会に参加して

【中村農園でのみかん狩り(伊予市)】

何事も自分の経験だけでは限界があり、文献に頼ることはもちろん、いろんな方と情報交換することが大切だとあらためて感じることができた。

除草剤に有機のものがあることは初耳だったし、自身の苦労を重ねた経験による知識を惜しみなく提供している事例があることも驚きだった。自身に当てはめると、苦しい修業時代を経て考案したレシピを公開することなどとてもできないからだ。しかし、今現在は農業をしていないが、農業に対して興味を持っている人は、経費がどれくらいかかっているか、という金銭的な部分でも隠さず苦労を見せてほしいと思っていることも知ることができた。

SDGsのGoal2は「飢餓に終止符を打ち、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」

以前より世界では食料不安は増大していたが、コロナ禍は、食料システムに対する新たな脅威に、そして、小規模食料生産者は大きな打撃を受けている。

国連レポート2020

農業は、人が暮らし、生きていくのになくてはならない存在だが、農業への投資はあまりされていないのが現実である。また、最近「生産者×加工業者」といったコラボ企画などがよく取り上げられているが、お互いにメリットがないと長続きしないだろうとも感じる。

【放任園(興居島)】

私にとって、SDGsの“一隅を照らす”農業とは、興居島で住み続けるという暮らしのもとに成り立つ持続可能な農業経営のあり方だ。

私は興居島の一農家という存在でしかないが、他の地域のことも、他の立場の人のことも、常に頭に置いて考えながら暮らしていこうとこの座談会を通じて改めて決意した。

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この記事を書いた人

山中 美佳(やまなか・みか)

生まれも育ちも、松山市の興居島(ごごしま)。北九州市立大学外国語学部国際関係学科卒業。 学生時代に、持続可能な生活について学ぶ。その後の生活を経て、理想と現実のすり合わせをしたいと思っている。家業の農家見習い兼パン職人。両親と弟の4人暮らし。